兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2015年11月15日(1798号) ピックアップニュース

「マイナンバー制の問題点と対応の留意点」  "百害あって一利なし"
政策・医院経営研究会

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マイナンバー制度開始を前に、会場いっぱいの90人が講演に聞き入った

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マイナンバー制の危険性を指摘した日弁連情報問題対策委員長の坂本団弁護士

 10月から個人番号の通知が開始されたマイナンバー制度について、協会は10月24日、政策・医院経営研究会「マイナンバー制の問題点と対応の留意点」を協会会議室で開催。医師・歯科医師、職員など会場いっぱいの90人が参加した。日本弁護士連合会(日弁連)で情報問題対策委員長を務める坂本団弁護士が、マイナンバー制度はプライバシー侵害につながる可能性が高く、将来的には社会保障の給付制限にも使われる恐れがあるとその危険性を指摘した。

 坂本氏は、マイナンバー制度の概要と政府が進める利用拡大の検討状況を解説し、問題点を解き明かした。
 プライバシー侵害という点では、利用範囲が拡がるほど厳格な本人確認やセキュリティーの確保は困難になるとし、なりすましなどの悪用は防ぎようがないと諸外国の例も示しながら解説。情報流出の危険性は非常に強いと警告した。
 また、政府は、「骨太の方針2015」で、個人番号の活用により「税・社会保険料徴収の適正化を進める」としており、国の社会保障への責任放棄に使われる可能性を強調し注意を呼びかけた。また、これは経済界の一貫した要求であることにもふれ、個人レベルで社会保障の給付を把握し、給付分の負担を求めるため個人番号を活用することで、例えば前年の医療給付が大きければ翌年の介護保険給付を削減するなどの年度や制度間での付け替えが可能になることなどを例示。社会保障の理念と相いれない施策が進められる恐れがあると指摘した。
 費用対効果の点でも、政府が示した「2400億円の税収増」は机上の空論で、莫大な費用をかけて制度を導入する根拠は示されていないとした。
 国の責任で十分な周知徹底をせずに番号の通知が始まったため混乱は必至で、当面の対応として、準備が整うまで施行の延期を求めていく必要があり、現状での利用範囲の拡大は論外と批判した。
 個人番号の提供義務について、事業所が税務署などに提出する書類への番号記載は国税通則法で義務付けられているが、従業員から事業者に番号提供を義務付けた規定はないとし、従業員から提供を受けられなかった場合には番号を記載せず書類を提出することは可能と解説。ただし、全従業員分の書類が空欄であるような場合には税務調査の対象になることも考えられるとして、その可能性も踏まえた各事業所での判断が必要と注意喚起した。
 申請により取得できる「個人番号カード」は、メリットがないばかりか、悪用された時のリスクが非常に大きい点と、個人番号カードが普及しなければ、政府の推進方針への反対の意思表示を示すことにもなるという点から、現状では取得すべきではないとした。
※研究会の動画とスライドデータを、協会ウェブサイトの会員限定ページでご覧いただけます。ぜひアクセスください。
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