兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年1月05日(1802号) ピックアップニュース

新春インタビュー 「地域密着型の大学病院」として
兵庫医科大学病院 病院長 難波 光義先生
副院長 内視鏡センター長 三輪 洋人先生

 兵庫医科大学病院は、阪神地域の中核病院として、大きな役割を果たしている。院長の難波光義先生と副院長の三輪洋人先生に、病院の特色や、地域の開業医との連携の工夫などについてインタビュー。西山裕康理事長と西原弘道理事が話を聞いた。

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兵庫医科大学病院 病院長 難波 光義先生
【なんば みつよし】1950年生まれ。1976年大阪大学卒業、83年同大医学博士、英国ロンドン大学ロイヤルポストグラデュエート メディカルスクール研究員、大阪大学医学部助手・講師などを経て、2000年兵庫医科大学内科学第二助教授、01年同総合内科学助教授、03年同総合内科学糖尿病科教授、04年〜同内科学糖尿病科教授、09年同病院副院長、09年〜学校法人兵庫医科大学理事・評議員、14年〜同病院病院長

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副院長 内視鏡センター長 三輪 洋人先生
【みわ ひろと】1956年生まれ。1982年鹿児島大学卒業、92年米国ミシガン大学内科研究、95年順天堂大学消化器内科講師、04年兵庫医科大学内科学上部消化管科主任教授、09年〜同内視鏡センター長、12年〜同国際交流センター長、13年四川省人民病院・成都第三人民病院客員教授、14年〜兵庫医科大学内科学消化管科主任教授・同病院副院長・同内科部門長

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聞き手 西山 裕康 理事長

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聞き手 西原 弘道 理事

患者目線と「2人主治医制」
 西山 本日はよろしくお願いします。兵庫医科大学病院は、創立以来40年間にわたり、最先端の医療や研究・教育も担いながら、阪神地区の地域医療の中心的役割も果たしておられますね。
 西原 私は第一外科の出身で、尼崎で開業していますので、いつも非常にお世話になっています。
 西山 めざされているのは、どのような病院でしょうか。
 難波 意識しているのは「患者目線」です。患者様が「相談しやすい、フレンドリーな大学病院」を貫いていきたいですね。もちろん、阪神南圏域の地域中核病院・特定機能病院・災害拠点病院として、高いレベルと安全性が求められますので、両方兼ね備えた病院とするのが、私ども執行部の役割と考えています。
 西山 「相談しやすい」というと、地域連携が重要となりますね。
 難波 ええ。現在、当院の紹介率が80.6%で、逆紹介率が58%となっています。地域の医療機関からの紹介患者さんが、元の所に戻っていただき、病院と診療所にそれぞれ主治医がいて連携できるという「2人主治医制」を、前院長の頃からめざしています。そのため、地域医療・総合相談センターを中心に、阪神地域7市1町の医師会と協定し、連携の会を持つようにするなど「顔の見えるお付き合い」を意識しています。
 また、当院は救命救急センターや手術センター、集中治療センターなどを集約し、2013年に急性医療総合センターとして開設しました。近隣の先生方が、救急患者の受け入れ先がなく困った場合のために、救急ホットラインも開設しています。ぜひ、ご活用いただきたいですね。お知りになりたい方は、お問い合わせください。
 西山 大学病院へ直接お願いできるというのは、すばらしい取り組みですね。
 西原 私も紹介先に困ったとき、大変助かっています。阪神地域では、「むこねっと」というネットワークができ、ICT(情報通信技術)を通じた情報共有も進んでいます。
 難波 「むこねっと」は阪神間7市1町の医療機関相互での情報共有システムで、患者さまが同意されれば、検査情報・CT・MRIなどのデータを共有することができます。開業医の先生方から希望が多かったようで、昨年4月から医師の所見も見ることができるようになりました。パソコン画面を通じ、他院の患者さんを共同で診ている感じですね。
 西山 県下で最も進んだICTの取り組みですね。
内視鏡センター拡充新規オープン
 西山 11月に内視鏡センターを拡充されたということですが。
 難波 236㎡から622㎡へ2.6倍に拡大し、県下第2位の広さとなりました。
 三輪 病棟新設にあたり、拡充の機会をいただきました。内視鏡は、機器と技術が進み、食道・胃・大腸に加え小腸も観察が可能で、さらに治療の機会も多くなり、医学・医療の分野としても役割が大きくなっています。当院では現在、年間1万3千件の検査・手術を行っています。
 西山 以前は診断中心でしたが、今は、むしろ治療の方が多くなっていると聞きますね。
 三輪 ええ、胃癌の6〜7割は内視鏡で治療できるという時代になってきました。さらに、患者さんの苦痛を除くため、鎮静・鎮痛剤を用いて、6〜8割の患者さんが楽に検査を受けられるようになっています。センター拡充前には、リカバリーベッドが3床しかなく、鎮静可能な件数が限られてしまう状態でしたが、今は20床近くを備えています。来年度は年間1万5千件の施行数をめざしたいと思っています。
 西原 私も内視鏡検査を行いますが、マンパワーの点から、鎮静は限られますので、そんな場合に検査をお願いしたいですね。
 三輪 もちろんです。現在は、検査までに1カ月程度の待ち時間が発生しますが、今回の拡充でかなり短縮できる見込みです。さらに今後、開業医の先生方との地域連携、顔の見える関係づくりを進め、将来的には、外来を通さずに検査できるという体制がつくられれば理想的だと考えています。
 西原 ぜひご検討いただければ、ありがたいですね。
協力支援病院とも緊密に連携
 西山 今年は診療報酬が改定されますが、この間、政府の方針として、在院日数短縮や自宅等への退院割合の強化、包括点数化が進められていますね。
 難波 ええ。看護配置が2対1や3対1の急性期の病床については2週間の算定日数の限度があり、一般病床や地域の病院に移っていただく流れを作らないと、経営的に非常に厳しくなってしまいます。
 協力支援病院との連携が大切ですので、当院でも地域医療・総合相談センターが、現在50弱ある協力支援病院との窓口となり、地域の看護師やMSW、ケアマネジャーなどとの勉強会を定期的に開催するなど、スムーズな連携をめざしています。
 三輪 以前は手術を含めた治療方針に悩む患者さんの場合、まず入院、検査を行ったうえでカンファレンスをしてから決定するということが通常でしたが、今は入院後の検査はDPCで包括点数となってしまうので、できるだけ入院前に検査を行うようになり、タイミングも限定され、今の制度の弊害の一つかなと感じることがありますね。
 西原 保険医協会は、施設基準や保険請求、審査・指導などについてくわしく、医療保険制度などをテーマとした講習会も開催できます。ぜひ医学生の卒後研修や新入勤務医のオリエンテーションなどで、お手伝いできる機会をご検討いただければと思います。
 難波 保険請求などに関する知識は、医師にも要求されますので、大切ですね。
 西山 最後に開業医に対するご要望をお願いします。
 難波 これまでに申し上げましたように、地域の先生方とのハードルの低い、しかも患者さん中心の密接な連携ができればと思います。また、今力を入れている点に、当院のPETセンターがあります。泌尿器科や産婦人科の小線源療法なども可能で、オペ前後の患者さんに対し、なかなか他では受けられない放射線治療で貢献したいと思っています。ぜひ、患者さんをご紹介いただければと思います。
 西山・西原 本日はありがとうございました。
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