兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年2月25日(1806号) ピックアップニュース

燭心

 最近の子ども向け新聞は侮れない。大人が読んでもためになる▼外敵から身を守るために、動くことができない植物は体の中に毒を作るという。しかし、食べた虫が死んでしまうような強い毒ではなく、味見した害虫が「こりゃまずい」と飛んで逃げていく程度の弱毒なのだそうだ▼自然界の秩序を乱さないためにはその程度の毒物で十分なのだろう。しかも野菜や果物が作り出すその少量の弱い毒素は、人間が食べると細胞を活性化させ、そのために「野菜は体にいい」となる。自ら攻撃する力を持たない植物は、理不尽に襲いくる害虫に体内のまずい少量の弱毒でもって攻撃をあきらめさせるのだ。これは究極の個別的自衛権ではないか。「毒」ではなく、「知恵」だ。どちらかというと優れた外交術なのかもしれない▼北朝鮮が不穏な動きを見せている。核実験に続き、今度は人工衛星と称したミサイルを発射した。ことの真偽や実効性は別にして政府はこれ幸いと迎撃態勢をとり大騒ぎ。中国も海上における不穏な動きをやめない。安倍内閣はこれらを口実に国内の世論を焚きつけ、際限なく防衛費をつぎ込む。今や5兆円を超えた。この勢いそのまま憲法改悪に向けて舵を切るつもりだ▼70年間植物のように動かなかった日本は、そのうち襲う側の害虫と化すかもしれない。しかし知恵のない、数が頼りの毒だけではとんでもないしっぺ返しを喰らうことにもなりかねない。歯止めをかけるのは野党と国民の共闘だ(九)
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