兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年3月25日(1809号) ピックアップニュース

2016年度診療報酬改定の要点〈医科・歯科〉

2016年度診療報酬改定の要点〈医科〉
包括点数の拡大、在宅への誘導で医療費抑制
 2016年度診療報酬改定で、4月1日から実施される新点数について、医科、歯科それぞれの特徴や問題点を掲載する。

〈改定率と概要〉
 今次の診療報酬改定率は、政府発表では本体+0.49%(医科+0.56%、歯科+0.61%、調剤+0.17%)、薬価▲1.22%、材料価格▲0.11%となった。差し引きすると▲0.84%だが、「市場拡大再算定による薬価見直し」を前回改定と同様に含めると▲1.03%、さらに改定率から外された薬価引き下げ分なども含めると、実質的には1.44%(国費ベースで1473億円)のマイナス改定となる。
 政府の低医療費政策によって、多くの医療機関が厳しい経営を迫られている。地域医療の再生のためには、これまで引き下げられてきた基本診療料をはじめとする診療報酬の抜本的引き上げが不可欠だが、今次改定でも全体マイナス、初・再診料は据え置かれたままである。
 改定の内容としては、引き続き急性期病床の削減と早期退院の促進、在宅誘導が顕著である。さらに、療養病床にも医療の必要度が高い患者の受け入れが迫られている。また、「かかりつけ医機能の評価」として、認知症地域包括診療料など前回改定に続き包括点数が拡大されたほか、在宅医療では在宅時医学総合管理料等の大幅な見直しが行われ、点数設定が複雑化している。
 以下、具体的な改定内容について紹介する。
〈主な改定項目〉
1.医学管理等

 1.) 特定疾患療養管理料等、退院日から1カ月を経過した日以降でなければ算定できない取り扱いが、自院からの退院の場合に限られることが明記された。同様の取り扱いの点数は、特定疾患療養管理料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、小児悪性腫瘍患者指導管理料、耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料。
 2.) 喘息治療管理料2(280点)が新設された。6歳未満または65歳以上の入院外の喘息の患者であって、吸入ステロイド薬を服用する際に吸入補助器具を必要とするものに対して、吸入補助器具を提供し服薬指導等を行った場合に、初回に限り算定する。吸入補助器具に係る費用は所定点数に含まれる。
 3.) 認知症地域包括診療料(1,515点)、認知症地域包括診療加算(30点。再診料の加算)が新設された。次のア)〜ウ)をすべて満たす患者に対して、療養上必要な指導および診療を行った場合に算定する。ア)認知症以外に1以上の疾患(疑いは除く)を有する イ)「1処方につき内服薬の投薬が5種類以下」かつ「1処方につき抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬又は睡眠薬の投薬が合わせて3種類以下」である ウ)疾患および投薬の種類数に関する要件を除き、地域包括診療料、地域包括診療加算の算定要件を満たす。
 4.) 地域包括診療加算は、施設基準のうち常勤医師の配置要件が「3名以上」から「2名以上」に緩和された。また、院外処方を行う場合には、患者が受診している医療機関のリストに加え、患者に地域包括診療料、地域包括診療加算を算定している旨を処方せんに添付して患者に渡すことにより、薬局に情報提供を行うこととなった。
 5.) 小児かかりつけ診療料が新設された。「処方せんを交付する場合」初診時602点、再診時413点、「処方せんを交付しない場合」初診時712点、再診時523点。当該保険医療機関を4回以上受診(予防接種等の保険外のものを含む)した未就学児までの入院外の患者が対象。3歳以上の患者は3歳未満から小児かかりつけ診療料を算定しているものに限る。
 6.) ニコチン依存症管理料について、過去1年の同管理料の平均継続回数が2回以上という基準を満たさない場合は、それぞれの所定点数の100分の70に相当する点数を算定することとされた。35歳未満の対象患者については、「ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)200以上」の要件が廃止された。
 7.) 外来がん患者在宅連携指導料(500点)が新設された。施設基準を満たす保険医療機関が、外来で化学療法または緩和ケアを実施している進行がんの患者であって在宅での緩和ケアに移行が見込まれるものについて、患者の同意を得て、在宅で緩和ケアを実施する他の保険医療機関に文書で紹介を行った場合に、1人につき1回に限り算定する。
 8.) 薬剤総合評価調整管理料(250点)が新設された。入院外の患者であって、受診時において当該患者に「6種類以上の内服薬」が処方されていたもの(他院による処方を含む)について、当該処方の内容を総合的に評価および調整し、当該患者に処方する内服薬が2種類以上減少した場合に、月1回に限り算定する。

2.在宅医療

 1.) 在宅療養支援診療所の施設基準に、在宅医療を提供した患者が95%未満であることが追加された。在宅医療提供患者が95%以上の場合は、次の基準を満たす必要がある。ア)直近1年間に5カ所以上の医療機関からの新規患者紹介実績 イ)過去1年間の在宅看取り実績20件以上または過去1年間の超重症児等に対する在宅医療の実績10件以上 ウ)直近1カ月に在宅時医学総合管理料(在医総管)または施設入居時等医学総合管理料(施設総管)を算定した患者のうち、施設総管を算定した患者の割合が70%以下 エ)直近1カ月に在医総管または施設総管を算定した患者のうち、要介護3以上または在医総管・施設総管における別に定める状態の患者の割合が50%以上。
 2.) 強化型在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院(強化型支援診・支援病)の施設基準が変更され、単独型については従来の看取り件数に代えて、15歳未満の超・準超重症児に対して一定件数在宅医学管理を行っている場合においても、看取りの実績を満たすとされた。連携型については、全体で看取り件数を満たした上で、それぞれの医療機関については看取り件数か超重症児等の在宅医学管理実績のいずれかを満たすこととされた。
 3.) 在宅緩和ケア充実診療所・病院加算が新設された。強化型支援診・支援病において、一定の緊急の往診実績・看取り実績と緩和ケアに係る研修を修了した常勤医師配置等の施設基準を満たして届出を行えば、在宅時医学総合管理料等に加算できる。
 4.) 強化型ではない在宅療養支援診療所・在宅療養支援病院(以下、強化型以外の支援診・支援病)が算定する在宅療養実績加算が、実績により「1」と「2」に区分された。従前の加算は「1」とされ、「2」は過去1年間の緊急の往診実績が4件以上および看取りの実績が2件以上あり、緩和ケアに係る研修を修了している常勤医師がいる場合、届出を行えば、「1」同様、在宅時医学総合管理料等に加算できる。
 5.) 次のア)〜キ)の要件を全て満たす場合に限り、在宅医療のみを実施する在宅専門診療所の保険医療機関指定が認められることとされた。ア)無床診療所 イ)在宅医療提供地域をあらかじめ規定・周知している ウ)往診・訪問診療を求められた場合、医学的に正当な理由等なく断ることがない エ)2以上の協力医療機関の確保または地域医師会から協力の同意を得ている オ)在宅医療導入の相談に応じており、医療機関の連絡先等を周知している カ)診療所の名称・診療科目等を明示し、診療時間帯に患者等の相談に応じる設備、人員等の体制整備 キ)通常診療に応需する時間以外の緊急時を含め、随時連絡に応じる体制の整備。
 6.) 在宅医療において、保険医の診療日以外の日に、訪問看護ステーション等の看護師等が保険医の指示に基づき、患者に点滴または処置等を実施した際の薬剤料や特定保険医療材料料は、医療機関が算定することとされた。また、医師の診療日以外の日に訪問看護ステーション等の看護師等が採取した検体を用いた検体検査について、検体検査実施料を算定できることとされた。
 7.) 往診料の夜間加算が夜間・休日加算に変更され、休日の往診を実施した場合にも算定できることとなった。
 8.) 在宅時医学総合管理料(在医総管)・施設入居時等医学総合管理料(施設総管)
 ア)月1回の訪問診療を行っている患者にも算定できることとなった。
 イ)月2回以上訪問診療を行っている場合の点数が、患者の重症度により区分され、末期の悪性腫瘍や指定難病等の「別に厚生労働大臣が定める状態の患者」と「それ以外の患者」の2区分となった。
 ウ)特定施設入居時等医学総合管理料が施設入居時等医学総合管理料に名称変更され、新たに特定施設でない有料老人ホーム、サービス付高齢者住宅と認知症グループホームも施設入居時等医学総合管理料で算定することとなった。
 エ)在医総管および施設総管に含まれ別に算定できない項目が拡大された。また、在宅寝たきり患者処置指導管理料に包括されている処置が算定できないことが明確化されたが、在宅での総合的な医学管理に必要な薬剤(投薬を除く)と特定保険医療材料については、在宅の部の薬剤料、特定保険医療材料料として算定できることが明記された。
 オ)「同一建物居住者の場合」「同一建物居住者以外の場合」の区分が廃止され、「単一建物診療患者の人数」に応じて算定することとなり、「1人」「2〜9人」「10人以上」の3区分となった。
 カ)単一建物診療患者の人数とは、当該建築物に居住する者のうち自院および特別の関係にある医療機関で在医総管または施設総管を算定している患者の数をいう。なお、在医総管または施設総管を算定している患者の数は、当該建築物において「月1回」「月2回以上」「別に定める状態の患者に月2回以上」を算定した患者の合計である。例えば、各区分の点数を算定した患者が1人ずついた場合の単一建物診療患者は3人とカウントする。
 キ)「院外処方せんを交付する場合」「院外処方せんを交付しない場合」の区分が廃止され、処方せん未交付加算(300点)が新設された。当月に処方せんの交付がない場合に算定する。
 9.) 在宅自己注射指導管理料について、「1(複雑な場合)以外の場合」の点数が4区分から2区分(「月27回以下の場合」と「月28回以上の場合」)に再編され、「月28回以上の場合」の点数が引き下げられた。また同一の患者について、2以上の医療機関で異なった疾患に対する在宅自己注射指導管理を行っている場合、それぞれの医療機関で同管理料を算定できることとされた。
 10.) 在宅酸素療法指導管理料について在宅酸素療法材料加算が、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料について在宅持続陽圧呼吸療法材料加算(100点)が新設された。それぞれ3月に3回に限り算定する。

3.検査・画像診断

 1.) 検体採取料のその他の検体採取に鼻腔・咽頭拭い液採取(5点)が新設された。
 2.) 検体採取料の「血液採取 1静脈」が5点引き上げられ25点に、血液採取の乳幼児加算が6点上げられ20点とされた。
 3.) 次の点数項目について、新生児および3歳未満の乳幼児に対する加算が引き上げられるとともに、3歳以上6歳未満の乳幼児に対する加算が新設された。E002撮影、E100シンチグラム(画像を伴うもの)、E101シングルホトンエミッションコンピューター断層撮影(同一のラジオアイソトープを用いた一連の検査につき)、E200コンピューター断層撮影(CT撮影)(一連につき)、E201非放射性キセノン脳血流動態検査、E202磁気共鳴コンピューター断層撮影(MRI撮影)(一連につき)。

4.投薬・注射

 1.) 一般名処方加算について、交付した処方せんに含まれる医薬品のうち、後発医薬品が存在する全ての医薬品(2品目以上の場合に限る)が一般名処方されている場合に算定できる「一般名処方加算1(3点)」が新設された。
 2.) 処方料、処方せん料について、30日を超える長期の投薬を行う場合は、長期の投薬が可能な程度に病状が安定し、服薬管理が可能である旨を医師が確認するとともに、病状が変化した際の対応方法および当該保険医療機関の連絡先を患者に周知することされた。その要件を満たさない場合は、原則として次に掲げるいずれかの対応を行う。ア)30日以内に再診を行う イ)200床以上の保険医療機関にあっては、患者に対して他の保険医療機関(200床未満の病院または診療所に限る)に文書による紹介を行う旨の申出を行う ウ)患者の病状は安定しているものの服薬管理が難しい場合には、分割指示に係る処方せんを交付する。
 3.) 入院外の患者に1処方につき70枚を超えて湿布薬を投薬した場合は、処方せん料や処方料、調剤料、薬剤料(70枚超過分)、調剤技術基本料は算定できないとされた。しかし、医師が疾患の特性等により必要性があると判断し、やむを得ず70枚を超えて投薬する場合には、その理由をレセプトに記載することで請求できる。
 4.) 腋窩多汗症注射(片側につき)200点が新設された。

5.リハビリ

 1.) 脳血管疾患等リハビリテーション料に区分されていた廃用症候群のリハビリテーションが独立し、疾患別リハビリテーションの一つとして廃用症候群リハビリテーション料180点(Ⅰ)、146点(Ⅱ)、77点(Ⅲ)が新設された。
 2.) 算定日数上限は180日から短縮され、120日とされた。廃用症候群の診断または急性増悪した日を起算日とする。
 3.) 心大血管疾患リハビリテーション料、呼吸器リハビリテーション料の早期リハビリテーション加算、初期加算についての起算日が変更され、発症、手術もしくは急性増悪から7日目または治療開始日のいずれか早い日に厳格化された。
 4.) 心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料の早期リハビリテーション加算、初期加算について、慢性疾患の患者については手術をした場合および急性増悪した場合のみ対象とされた。
 5.) 呼吸器リハビリテーション料の早期リハビリテーション加算、初期加算について、慢性疾患の患者については急性増悪した場合のみ対象とされた。
 6.) 要介護・要支援者に対する維持期リハビリテーションの算定期限は、2016(平成28)年3月31日までとされていたが、入院外の患者については2018(平成30)年3月31日まで延長された。
 7.) 目標設定等支援・管理料250点(初回)、100点(2回目以降)が新設された。脳血管疾患等リハビリテーション、廃用症候群リハビリテーションまたは運動器リハビリテーションを実施している要介護・要支援者に対し、機能予後の見通しを説明し、目標設定の支援等を行った場合に算定する。
 8.) リンパ浮腫複合的治療料が新設された。リンパ浮腫の患者に複合的治療を実施した場合、国際リンパ学会による病期分類でⅡ期後期以降を重症の場合として1日200点、Ⅰ期以降をそれ以外の場合として1日100点を算定できる。

6.精神科専門療法

 1.) 通院・在宅精神療法を行う患者に対し、1回の処方において3種類以上の抗うつ薬または3種類以上の抗精神病薬が処方されている場合に、所定点数の100分の50により算定する。
 2.) 認知療法・認知行動療法の対象患者について、従来の入院患者以外のうつ病等の気分障害に加えて、強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害の患者に対しても算定できることとされた。
 3.) 救急患者精神科継続支援料が新設された。精神科医または精神科医の指示を受けた看護師等が、自殺企図や自傷等のために気分障害等の精神疾患の状態にある患者に対し、生活上の課題を確認した上で、継続して治療を受けるための指導や助言を行う場合に、入院患者は435点(6カ月以内に月1回)、退院後の患者は135点(6カ月に6回を限度)が算定できる。
 4.) 精神科ショート・ケア、精神科デイ・ケア、精神科ナイト・ケア、精神科デイ・ナイト・ケア(以下、精神科デイ・ケア等)について、最初に精神科デイ・ケア等を算定してから1年を超える期間に行われ、週4日以上実施する場合には、患者の意向を踏まえ、必要性が特に認められる場合に限り、算定できることとされた。

7.入院

 1.) 夜勤時間特別入院基本料が創設された。月平均夜勤時間超過減算を算定してもなお月平均夜勤時間の基準を満たすことができない場合は、入院基本料の所定点数の70%となる夜勤時間特別入院基本料を算定することとされた。なお、月平均夜勤時間超過減算の減算率は20%から15%に緩和された。
 2.) 入院中の患者が他医療機関を受診した際の入院医療機関における入院料の減算幅が緩和された。
 3.) 一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」の評価項目が変更されるとともに、該当患者の基準も「A得点2点以上かつB得点3点以上」「A得点3点以上」「C得点1点以上」のいずれかとされた。
 4.) 有床診療所に在宅復帰機能加算が新設された。
 5) 月平均夜勤時間の計算にあたって、夜勤時間が16時間以下(短時間正職員は12時間以下)の者を計算から除外していたが、7対1,10対1入院基本料については16時間未満(短時間正職員は12時間未満)の者を計算対象から除外することとされ、7対1,10対1入院基本料を除いては月8時間以上の看護職員を計算に含むことができることとされた。夜勤時間帯に従事する職員数を常勤換算する方法は廃止され、夜勤時間帯に外来と病棟を兼務する場合に時間按分で実人員数を計算することとされた。
 6.) 療養病棟入院基本料2に「医療区分2又は3の患者割合が5割以上」との施設基準要件が加えられた。

8.届出について

 1.) 夜間・早朝等加算、明細書発行体制等加算など、これまで算定にあたって届出が必要とされた点数のうち、いくつかが届出不要となった。届出は不要でも施設基準を満たしておくことは必要である。
 2.) 2016(平成28)年3月31日現在届出を行っている施設基準の要件に変更がなく、引き続き要件を満たしている場合は、改めて届出を行う必要はない。
 3.) 施設基準が定められた新設点数や、施設基準が変更された既存の点数を引き続き算定する場合は、地方厚生局長等に届出を行い、点数を算定する。2016年4月については4月14日までに届出書の提出があり、同月末日までに要件審査を終え届出の受理が行われたものについては、同月1日にさかのぼって算定することができる。

2016年度診療報酬改定の要点〈歯科〉
歯科医療危機の打開にほど遠い −− 現場の声を一定反映も
 今次診療報酬改定は、歯科医療機関の経営改善にほど遠いものである。歯科医療危機を食い止め、良質な歯科医療を国民に提供できるよう、歯科医療費の総枠拡大と基礎的技術料の大幅な引き上げをあらためて要求する。
 今次改定では歯科と医科の連携推進が盛り込まれるなど患者に有益な項目が新設されたほか、不合理是正や新たな保険収載など診療現場の実態に即した見直しが一部行われた。しかし、政府がすすめる歯科診療所の選別化を企図していることは看過できない。また、依然として歯科技工士と歯科衛生士の就業改善にはほど遠いものである。
 協会は引き続き、窓口負担軽減・保険範囲の拡大・診療報酬の改善へ、国民とともに「保険でより良い歯科医療」を求める運動を強めていくものである。

〈主な改定項目〉
1.歯科疾患管理料における文書提供要件の削除と加算点数化

【歯科疾患管理料】110点→100点
(新設)文書提供加算(文)+10点
2.う蝕の重症化予防に対する評価と、かかりつけ歯科医機能の新たな位置づけ

(1)フッ化物歯面塗布処置の点数引き上げと対象患者の拡大
 フッ化物歯面塗布処置(1口腔につき)
1 う蝕多発傾向者の場合80点→100点
2 在宅等療養患者の場合80点→100点
3 エナメル質初期う蝕に罹患している患者(月1回)(新設)120点
(2)エナメル質初期う蝕管理加算(初期う蝕)の新設
 「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が管理する場合、「歯管」に260点(月1回)加算が新設された。
(3)う蝕の重症化予防に関連する処置の点数引き上げ
1.) 歯髄保護処置の点数引き上げ
 歯髄温存療法150点→188点
 直接歯髄保護処置120点→150点
2.) 初期う蝕早期充填処置の点数引き上げ
 複合レジン系135点→145点
 グラスアイオノマー系134点→144点
3.) う蝕薬物塗布処置および知覚過敏処置の点数引き上げ
3歯まで46点、4歯以上56点
(4)4根管または樋状根に対する加算の新設
 4根管または樋状根に歯CTおよびマイクロスコープを用いた場合の加算点数(4根管または樋状根+400点)が新設された。(施設基準の届出必要)

3.歯周治療の変更と歯周病安定期治療における、かかりつけ歯科医機能の新たな位置づけ

(1)混合歯列期の歯周病検査の点数と検査項目が変更され、「P混検」が40点引き上げられ、検査項目が変更された。(プロ−ビング時の出血の有無または1点法以上の歯周ポケット検査→プロ−ビング時の出血の有無の検査)。なお、混合歯列期にP混検以外の歯周病検査を実施した場合は、1口腔単位で実施し、算定は永久歯の歯数に応じた所定点数で算定する。
(2)歯周疾患処置の糖尿病患者に対する用法拡大が行われ、歯周基本治療後に限られていた薬剤の計画注入が、歯周基本治療と並行して実施できることになった(医科からの診療情報提供が必要)。また、機械的歯面清掃処置が8点引き上げられた。(歯清)60点→68点
(3)歯周外科手術に歯肉歯槽粘膜形成手術が統合された。
(4)歯周外科手術に伴う暫間固定装置の算定回数を明確にした。
1.) 「簡単なもの」(4歯未満)は歯周外科の術前・術後、「困難なもの」(4歯以上)は術中・術後に1回算定する。術後の装着から6カ月後、6カ月に1回算定できる。
2.) 歯周外科手術を伴わない場合は、「簡単なもの」を治療中1回算定する。装着から6カ月後に1回に限り再算定できる。
(5)歯周病安定期治療(SPT)の対象患者が拡大され、「か強診」が実施した場合の包括点数として、SPT(Ⅱ)が新設された。
1.) SPT(Ⅰ)(Ⅱ)開始時点の要件の緩和
 「骨吸収が歯根長の3分の1以上」が削除され、「4㎜以上のポケットを有する患者」のみとなった。
2.) 機械的歯面清掃処置はSPT(Ⅰ)(Ⅱ)の算定月は算定できなくなった。
3.) 「か強診」が実施するSPT(Ⅱ)の新設
 1歯以上9歯以下380点
 10歯以上19歯以下550点
 20歯以上830点

4.全身的な疾患を有する患者の対応と医科歯科連携

(1)全身的な疾患を有する患者の対応
1.) 血圧、脈拍、経皮的酸素飽和度を経時的に監視した場合の評価を新設
 歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)が新設され、1日につき45点を算定することとされた。(施設基準の届出必要)
2.) 歯科治療総合医療管理料(Ⅰ)の管理対象に支台築造印象、印象採得が追加された。
3.) 歯科外来診療環境体制加算(初診時26点→25点)、同再診時(4点→5点)
(2)周術期口腔機能管理の対象拡大
1.) 周術期口腔機能管理料(Ⅲ)の対象に緩和ケアの患者が加わり、算定時期が治療開始以降から管理計画策定以降に拡大された。
2.) 周術期専門的口腔衛生処置の所定点数が92点になった。また、新たに周Ⅲで管理中の患者が対象に加わり、月1回算定できるようになった。
3.) 歯科標榜の病院と連携し、入院患者に病院外の歯科医が訪問して管理した場合も周Ⅰが算定できることとされた。
(3)入院・入所患者への口腔機能管理や栄養サポートチームへの参画の評価
1.) 歯在管の算定要件に口腔機能管理が追加され、機能管50点が廃止された。歯援診は月1回240点を、歯援診未届の歯科医療機関は180点を算定することとされた。文書を提供した場合は10点を加算。
2.) 栄養サポートチーム連携加算の新設
 歯科のない病院(NST1)、介護保険施設の食事観察に参画した場合(NST2)として、いずれも歯科疾患在宅療養管理料に60点を加算する。

5.歯冠修復および欠損補綴など口腔機能回復に対する技術

(1)歯冠修復
1.) 根面部の充填の算定区分の変更
 前歯部5級窩洞を除き歯の根面部のう蝕に対する充填は、「単純なもの」から「複雑なもの」へ変更された。
2.) 支台築造および支台築造印象
 間接法と直接法に区分され、間接法はメタルコアとファイバーポスト、直接法はファイバーポストとその他に分かれた。間接法の支台築造印象は4点引き上げられ、30点になった。
3.) レジン前装金属冠が、ブリッジの支台歯に限って第一小臼歯にも適応されることになった。
4.) 硬質レジンジャケット冠、CAD/CAM冠の大臼歯への適応拡大(歯科用金属アレルギーの患者で医科医療機関からの情報提供があった場合に限る)。この場合は、補綴物維持管理料の対象外。
5.) 硬質レジンジャケット冠の技術料が引き上げられ、光重合は材料料が引き下げられた。
 加熱重合758点→776点
 光重合969点→964点
(2)ブリッジ
 平行測定が廃止され、ブリッジ支台歯形成加算20点(1歯につき)が新設された。
(新設)ブリッジ支台歯形成加算20点
(3)有床義歯
1.) 補綴時診断料の算定要件が1口腔単位から1装置単位にされ、有床義歯新製の場合と、有床義歯内面適合法または増歯の場合に細分化された。有床義歯内面適合法または増歯の場合の算定後3月以内は、増歯の場合に限り再算定ができない。
【補綴時診断料(1口腔につき)】100点
→【補綴時診断料(1装置につき)】
 1 新製の場合90点
 2 1以外の場合70点
2.) 有床義歯内面適合法
 新製義歯を装着した日から6カ月以内の有床義歯内面適合法は義歯修理と同じように、所定点数の50/100で算定することになった。また、下顎総義歯に限り軟質材料の使用が認められた。ただし、装着した日から6カ月以内はT.コンデの算定ができない。
3.) 歯科技工加算の取り扱いの変更
【歯科技工加算】+24点
 →【歯科技工加算1】(当日)+50点
  【歯科技工加算2】(翌日)+30点
4.) レジン床義歯の点数引き上げ、熱可塑性樹脂有床義歯の点数引き下げがそれぞれの歯数に応じて改定された。
5.) 屈曲バーの金パラのパラタルバー、リンガルバーが廃止された。

6.画像診断や投薬、処置、手術の分野の変更

(1)画像診断における撮影料加算が引き上げられた。
 新生児(生後28日未満の者)
50/100→80/100
 3歳児未満の幼児30/100→50/100
(新設)3歳以上6歳未満の幼児30/100
(2)抜歯手術における難抜歯の取り扱いが加算点数化され、前歯または臼歯の難抜歯について、難抜歯加算として210点をそれぞれ抜歯点数に加算する。
(3)床副子調整とは別に床副子修理の点数234点が新設された。(1月以内の2回以上は第1回の修理に含まれる)

7.新規医療技術、先進医療技術の保険導入

(1)歯冠補綴時色調採得検査(色調)
 前歯部に装着するレジン前装金属冠または硬質レジンジャケット冠の製作に際して、(口腔内カラー写真を撮影した場合に)1装置につき10点が算定できる。
(2)有床義歯咀嚼機能検査(施設基準の届出必要)
 義歯の新製にあたり、下顎運動測定と咀嚼能力測定を併せて測定した場合は480点、咀嚼能力測定のみを測定する場合は100点を算定する。480点の検査は装着前1回および装着日以降月1回算定。100点の検査は、480点を算定した翌月から算定。いずれの検査も、装着月から半年間のみの算定。
(3)舌圧検査
 舌接触補助床を用いて摂食機能療法を実施している患者に対し、舌圧測定した場合に1回140点、月2回まで算定。

8.6歳未満の乳幼児または著しく歯科診療が困難な患者(在宅医療を含む)加算点数の変更

(1)加算点数が70/100,50/100,30/100、に区分された。

9.在宅医療のさらなる普及に向けた充実と摂食機能や口腔機能管理の評価

◆2017年3月31日までに在宅専門でない届出をしないと、それ以降歯科訪問診療料を算定できなくなった。
(1)在宅医療専門の歯科診療所が認可され、外来応需体制を有しないことを認める代わりに、開設要件が設けられた。
(2)歯科訪問診療料の要件緩和と複数患者の場合の評価の見直し
1.) 同居の同一世帯の複数患者
 歯科訪問診療の実施にあたり、同居する同一世帯の複数の患者を診療した場合は、1人は訪問診療1を、それ以外は訪問診療2を算定することとされた。
2.) 20分未満の歯科訪問診療の取り扱い
 著しく歯科診療な困難な患者への訪問診療にあたり、20分以上の診療が困難な場合は、診療時間が20分未満であっても訪問診療1が算定できるようになった。
3.) 特別の関係にある施設等への訪問診療
をする場合、初再診料の算定を歯科訪問診療料を算定したものとみなし、訪衛指が算定できる取り扱いとされた。
4.) 歯科訪問診療料のみを算定する場合の50/100加算の対象項目と加算割合の変更が行われた。
5.) 訪問診療3の点数が120点に引き下げられた。
(3)在宅患者の摂食機能障害の管理
1.) 在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料(新設)と歯援診、「か強診」への加算
 管理計画にそって歯科医師が30分以上の指導管理を実施した場合、月4回を限度に算定する。届出がなくても算定できる。「歯援診」の場合は50点を、「か強診」の場合は100点を加算する。
 1 10歯未満350点
 2 10歯以上20歯未満450点
 3 20歯以上550点

10.療養担当規則の変更

(1)自己負担がない患者への明細書無料発行の原則が義務化された。
(2)紹介状がない大病院受診時の定額負担が導入された。
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