兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年3月25日(1809号) ピックアップニュース

患者さんの声を集めて ストップ! さらなる負担増
新しい署名にご協力を! 政策宣伝広報委員会

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▲署名用紙
署名用紙の追加注文は、電話078-393−1807まで

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 協会は、政府の計画する新たな患者負担増計画の阻止をめざし、世論を盛り上げようと、新しい「ストップ! 患者負担増」署名キャンペーンを開始する。署名は7月までに3万筆を目標に集め、地元国会議員への働きかけを通じて、国会に届ける予定にしている。左記の政策宣伝広報委員会のよびかけ、政策解説を参考に、ぜひとも多くの会員の皆さまのご協力をお願いしたい。

 政府は現在、さまざまな負担増(下表)を計画しています。政府は参議員選挙で与党に不利な材料になるとして、争点化しない姿勢ですが、来年の通常国会で法案を成立させるとしています。
 参議院選挙でこれらを争点化し、国民的な反対世論を盛り上げなければなりません。そこで、協会は全国の協会とともに4月から6月末まで新しい「ストップ! 患者負担増」署名に取り組みます。
 私たちの力で、政府の計画を一人でも多くの患者さんに知らせ、負担増を止めましょう。先生方の積極的な協力をお願いします。診療報酬改定の関連書籍に同封して署名用紙をお届けします。まずは、先生ご自身とご家族、職員の方の署名からご返送ください。
 いよいよ始まる署名運動に合わせて、本紙では今号から、政府の計画についてくわしく解説します。第1回目は「『かかりつけ医』以外の受診時定額負担」について取り上げます。




解説 新たな患者負担増 (Ⅰ)
受診時定額負担で「かかりつけ医」普及狙う
 「受診時定額負担」とは、すべての患者に、これまでの窓口負担に加えて100円から数百円の定額負担を求めるものである。
 民主党政権下の2011年に厚生労働省が提案して以来、再三にわたり提案されたが、国民の反対で撤回されてきた。昨年閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015(以下、骨太の方針)」でも再び導入が狙われている。
「かかりつけ医」普及の真の狙い
 今回の政府の案がこれまでと異なるのは、導入理由を「かかりつけ医の普及(骨太の方針)」としている点である。財務省の「建議」では、より具体的に「かかりつけ医以外を受診した場合に...個人が日常生活で通常負担できる少額の定額負担を導入」とされている。
 この背景には、患者の複数医療機関への受診や開業医の紹介を経ない病院受診を減らすことにより、医慮費を抑制するという政府の方針がある。
 しかし、そもそも「かかりつけ医」をどのように決めるのか。「かかりつけ医」=「総合診療医」なのか。もし英国のように、国民一人ひとりが地域の医師をGP(家庭医)として登録し、疾病の種類や重症度にかかわらず、まず、そこを受診するという「ゲートキーパー」的役割を強化した制度となるのであれば、制度開始時点で患者も医療機関も大混乱に陥る。
 さらに、今回の診療報酬改定で「地域包括診療料」算定要件の緩和や「認知症地域包括診療料」「小児かかりつけ診療料」が新設されたことと合わせて考えれば、ゆくゆくは患者ごとの包括点数、さらには「人頭割支払い」が設定されることも考えられる。
 「かかりつけ医」制度は一見、効率的に見える。しかし、かつて英国ではGPの受診までに予約から約2週間、さらにGPが紹介を行っても緊急性の高くない手術の場合、実施まで18カ月かかったといわれ、またGPは多岐にわたる症状を診察するため、誤診リスクも高いといわれる。医師の英語圏への流出も少なくない。これらの状況は、英国がサッチャー政権以来「医療費抑制政策」を掲げ、少ない医療資源を配分しようとした当然の結果であった。
 日本でも長く続く医療費抑制政策のため、診療所の経営は厳しく、「かかりつけ医」を担うべき診療所の医師は増えていない。また診療所の医師の5人に1人が70歳以上である。こうしたことを考えれば、かかりつけ医制度の拙速な導入は、患者や医療機関に新たな混乱と負担をもたらす危険性が高い。
ゆくゆくは4割負担
 「建議」は、かかりつけ医以外を受診した際の負担額を「個人が日常生活で通常負担できる少額」としているが、これまでの窓口負担拡大の流れを考えれば今後、高額になることも考えられる。仮に定額負担が500円になれば、医療費が5千円の場合、患者負担は3割の1500円に500円を加えた2千円となり、実質4割負担となる。
 健康保険法の附則では「将来にわたって患者負担は3割を限度とする」とされている。この制度改悪は、この国民との約束を反故にするものである。
 また、定額負担に経済的に耐えられる患者は、これまで通り「かかりつけ医」以外を自由に受診できるため、医療機関受診に経済的格差を持ち込み、新たな「モラルハザード」を生む。公平性と公共性は国民皆保険制度の要で、フリーアクセスを窓口負担金で阻害し、地域医療に混乱をもたらすこの制度の導入に反対しなければならない。
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