兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年4月15日(1811号) ピックアップニュース

インタビュー(2) 診療報酬改定 −入院から在宅へ?−
在宅点数の複雑化で混乱

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中央区・生田診療所
武村 義人先生

 −今回の改定は、数字上は医科で0.56%のプラス改定と言われていますが実感はどうでしょう。
 プラス改定とはとても思えません。全般的に処置に関する点数は少し引き上げられましたが、検査に関する点数は引き下げられており、実際にはかなりのマイナスになると思います。
 −今回の改定で、診療所にとって特徴的な項目は何でしょうか。
 やはり一番は在宅でしょう。前回改定で「同一建物居住者」に関わる点数が大幅に引き下げられ、在宅医療を行う医療機関は、同じ建物の患者を別々の日に訪問せざるをえなくなるなど、苦しい対応を強いられていました。今次改定で、「在宅時医学総合管理料」の点数が、患者の「状態」や「訪問回数」等によって、細かく分けられました。末期のがん患者など重症ではないとされた場合、約1割の引き下げとなります。有料老人ホームなどへの評価も引き下げられ、さらに一つの建物に居住している人数で点数が変わる「単一建物」という考え方になるなど、点数の体系が複雑になり、現場はどうしたらいいのかと混乱し、憤っています。
 −先生の医院への影響はいかがですか。
 試算してみたところ、これまで通り訪問診療を行った場合、在宅だけで1割程度の減収になるという結果となりました。
 私の診療所は、市営住宅や復興住宅などの集合住宅で、認知症の方や高齢で歩くのが困難になった多くの方を在宅で診ています。医療は、患者個人個人の状態を診るもので、建物の居住人数などで区分するのはおかしいと思います。
 他に、在宅医療を担う診療所の施設基準に、在宅での看取りの件数が含まれていることにも、以前から違和感を持っています。自宅で最期を迎えるには、介護者である家族の協力が必要になりますが、老夫婦2人暮らしの場合で苦しがっているので緊急入院したなど、難しいケースも多いですからね。
 −政府は「入院から在宅へ」と言っていますが、在宅医療が充実するようにはとても思えませんね。
 その通りです。医療費削減ありきで、患者を安上がりな在宅に誘導しようとする改定といえるでしょう。「これで治療は終了」と大病院から退院を迫られた患者からの往診依頼も増加したように感じます。しかし在宅医療は「安上がり」ではありません。通院できない病状の方を訪問し、24時間対応するというのは、医療機関に非常に負担が大きいものです。もっと評価を引き上げるべきです。
 −国の医療政策の方向性について一言お願いします。
 診療報酬はマイナス改定が続き、医療機関の経営は厳しい状態が継続しています。一方で、患者の窓口負担も増やされ続け、受診抑制が進んでいると感じます。やはり医療費の総枠を拡大し、基礎的技術料である初・再診料を引き上げることと同時に、窓口負担の軽減が必要だと思います。
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