兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年4月25日(1812号) ピックアップニュース

解説 新たな患者負担増 Ⅳ
エーッ 介護サービスが保険で受けられなくなるの?

まだまだ上がる利用者負担
 財務省が取りまとめた「平成28年度予算の編成等に関する建議」では、介護保険利用料について「高額介護サービス費制度について、高額療養費と同水準まで利用者負担限度額を引き上げるべき」とされた。
 これは現在、所得によって決められている介護利用料負担の上限額を高額療養費制度に合わせるというものである。同建議では高齢者の高額療養費制度の上限額を引き上げることも提案されており、あわせて考えれば、一般的な所得の人で現在の3万7200円の上限額が5万7600円に55%も増えてしまう。
 さらに、「65歳以上74歳以下の高齢者について、医療制度との均衡を踏まえ、原則2割負担化への見直しを実施すべき」とされ、医療・介護総合法で2015年から所得が一定以上の介護利用者の負担が1割から2割になったが、財務省の提案は2017年の国会で法律を成立させ、原則2割負担にするとしている。
介護保険給付も受けられない
 同建議では、訪問介護の「生活援助」利用者のうち「軽度者(要介護1・2)」について、利用料を全額自己負担にするとしている(図)。現在の要介護度に応じた車いすや移動用リフトのレンタルサービス、手すりの取り付けや床の段差の解消などといった、必要な自宅改修についても、来年の国会に法案を提出し、すべて自己負担にしようとしている。
 さらに、同建議は要支援1・2、要介護1・2の人に対する介護保険サービスをすべて市町村が地域住民のボランティアなどを活用して行う地域支援事業に移すとしている(図)。医療・介護総合法では、要支援1・2の人へのサービスの一部がこの地域支援事業とされた。その結果、財源不足を理由にサービスを打ち切っている自治体もある。実際に、独居で障害があり、入浴の見守りを必要とする90歳代の高齢者に対する訪問介護が打ち切られるなどの事態が発生している。
 このような利用料負担の引き上げや、介護サービスの利用制限は、介護保険の「保険あってサービスなし」といわれる現状をさらに悪化させるものである。医療と介護がシームレスになる中、国民の健康を守る医師として、こうした介護保険制度の改悪にも反対していきたい。

図 要支援1・2、要介護1・2の人は介護保険サービスが受けられない

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