兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2016年5月25日(1814号) ピックアップニュース

保団連 原発問題学習交流会
「ただちに原発ゼロ」実現へ運動強めよう

 保団連は4月24日、第5回原発問題学習交流会を東京都内で開催し、全国から56人が参加した。兵庫協会からは森岡芳雄・加藤擁一両副理事長、錦和彦・松岡泰夫両環境・公害対策部員が出席した。原発の危険性と原発事故の過酷さを映し出した映画「日本と原発」の監督を務めた河合弘之弁護士が「日本と原発の全貌」と題し記念講演を行った。全国各地の協会から活動報告があり、兵庫協会から森岡芳雄副理事長(環境・公害対策部長)が福島県・医療生協わたり病院の齋藤紀先生のインタビューについて報告した。錦・松岡両先生の参加記を紹介する。

参加記(1)
〝脱原発は勝ち目のある闘い〟
環境・公害対策部員  錦  和彦

1814_02.jpg

全国から56人が集まり、脱原発への取り組みを交流した

 記念講演講師の河合弁護士から講演中にクイズが出された。「世界で一番自然エネルギー発電の絶対量(割合ではない)が多い国は?」。
 今まで当てた人はいないとの説明のすぐ後に、兵庫から参加の松岡先生がずばり「中国!」と解答し、会場が沸いた。専門用語を用いずに、常に会場の理解を得ながら話が進む。
 反原発をどのようにして裁判で勝ち取っていくかという話だけでなく、経済的にみても原発推進のままではよくないという点を、映画という手法も用いて訴えようとされている。(自然エネルギーの世界の現状をとらえた新作は秋に公開予定)
 「脱原発闘争は勝ち目のある闘い。経済的にも世界の流れからしても、敗訴にめげてやめてしまわなければ、いずれ必ず勝てるのだ」と言われる意味が徐々に理解できた。
 続く特別報告の鹿児島協会の青山浩一先生からは、日医工の乳幼児向けゼリー状安定ヨウ素剤がいよいよ認可されるみこみとの情報提供があった。被爆の影響を受けやすい乳幼児や、障がい等で錠剤が服用できない人にも朗報となる。ただし、医療用ではなく、災害用とのこと。
 今年1月、高浜原発から45〜70㎞圏の兵庫県篠山市が、30㎞圏外では日本で初めて安定ヨウ素剤の事前配布を開始した。その素早い対応には驚いたが、熊本の予測不能の活断層型地震を目の当たりにした今では、稼働中の川内原発周辺自治体でのさらなる配布・備蓄・服薬指導の促進が望まれる。
参加記(2)
国民的連帯の必要性感じる
環境・公害対策部員  松岡 泰夫
 保団連公害環境対策部長の野本哲夫先生は、基調報告で、5年前の福島第一原発の過酷事故を経験しても「原発再稼働」ありきの安倍政権の姿勢には唖然としていると主張。世界は「原子力」から「再生可能エネルギー」に軸足を移しているとした。また、再生可能エネルギーについて、1990年代までは技術的に世界をリードしていた日本が、再生可能エネルギーを重視しないために現在はドイツや中国の後塵を拝しているとのこと。
 次に河合弘之弁護士が記念講演された。河合弁護士は導入部分で、福島の事故で日本が潰れなかったのは全くの偶然であり、福島県を中心に半径250㎞の範囲で人間が住めなくなる可能性があったと断言された。
 さらに、講演の中で、非常に分かりやすく原発の問題点をまとめてくれた。(1)地震、津波大国の日本では原発は超危険、(2)資源小国が故に、プルニウムとウランを利用しての「自己完結型永久エネルギー構想」(核燃料サイクル)が原発推進の根本的理由だが、それはすでに破綻している、(3)日本の産業界の60%が「原発ムラ」の影響を受ける。その原因は絶対損しない「総括原価方式」にある、(4)日本は電気が余っている、(5)国富の流失にはならない、(6)原発は唯一のCO2対策ではない、(7)新規制基準は世界最高ではない、(8)重大事故は1万年に1回と言っていたが...実はここ50年でスリーマイル、チェルノブイリ、福島と3回も起こっている、(9)3・11以降、裁判官の認識が変わり、反原発側も勝利するようになった。
 (2)については、原発促進派の論理では、日本がエネルギー小国で、常に燃料不足に陥る危険性があり、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し高速増殖炉で発電する核燃料サイクルが実現すれば、石油がそれほど必要ではなくなるはずだった...しかし、これは「絵に描いた餅」で、他の原発先進国はシステムの不安定さからすべての国が撤退している。六ヶ所村で使用済み燃料を再処理しプルトニウムを取り出すのは失敗の連続で、高速増殖炉の「もんじゅ」も事故続きで稼働しておらず、高い維持費を払い続けている。
 (3)にある「総括原価方式」は発電コストにかかった3%を利益として電気料金に上乗せできるシステムで、その源泉は国民から吸い上げた電気料金である。その利益を受けるために産業界をはじめ、政府・官僚、族議員そして御用学者、電通や博報堂、はては関連労組がいわゆる「原発ムラ」を構成している。そしてムラの住人それぞれが、電力会社の意向に反対できない関係にある。
 今回学習交流会に参加し、原発の危険性、維持することの非合理性、廃炉を推し進めることの重要性がよく理解できた。原発ゼロに向け、国民的連帯の必要性を強く感じた。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方