兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年6月15日(1816号) ピックアップニュース

国保自治体アンケート 結果
保険証未交付4万6千件

 県下自治体に対し、協会が毎年実施している「国保(国民健康保険)自治体アンケート」の結果、保険証の未交付が4万6千件にのぼっていることなどが明らかになった。国保保険料(税)の滞納が19万7895世帯、滞納によって差し押さえを受けた件数も5861件にのぼるなど、高い国保料に苦しんでいる加入者の実態が表れている(表)。国保アンケートは1988年に開始したもので、24年連続で全自治体から回答を得ている。

 県全体の未交付率は5.58%で前年の3.17%を大きく上回った。実に県下で4万6071世帯が、保険証のない「無保険」状態に置かれている。市町別では尼崎市が15.8%と最も高く、県平均の3倍近い水準。次に姫路市9.8%、加東市8.2%と続く。
 有効期間の短い短期保険証の交付は、国保加入世帯の4.59%と、前年度と比べ、1ポイント以上減少した。しかし依然として3万7916世帯が「短期保険」状態で、慢性疾患などの長期的な受診が難しい状態に置かれている。
 窓口でいったん全額自己負担しなければならない資格証明書の交付は8285件、加入世帯比では1.00%であった。
保険料減免世帯6割近くに
 保険料の減免制度利用世帯割合は、国による減額制度(7・5・2割減免)の利用世帯が48万9635世帯で、全体の59.3%と6割近くにものぼった。また自治体による減額制度の利用世帯数は8万2316世帯で、全体の10.0%となった。
 ただし自治体独自の減免制度は、西宮市で40.4%にあたる2万5587世帯、尼崎市で36.5%にあたる2万8337世帯が利用しており、この2市だけで県下の独自減免制度利用世帯の65%を占める。2市以外での利用率はわずか4.1%にとどまっており、各自治体間での制度の違いによる格差が浮き彫りとなった。
 国保料の滞納世帯数は19万7895世帯で、実に24%が滞納している。
 1年を超える滞納による差し押さえ件数は、昨年より減少し5861件となった。最多は洲本市で、601件が差し押さえとなった。これは同市で1年以上の滞納があった856世帯のうち実に70%で差し押さえが行われたことになる。
 国保には国保法44条に基づいて、災害・事業の休廃止・失業・生活困窮の場合に、医療費窓口負担が免除、減額、猶予される制度が定められている。県下でも41市町のうち約8割に当たる34市町で対応する条例・規則・要綱が定められているが、実際に利用されているのはわずか6市町のみと、44条に基づいた減免制度がほとんど活かされていないことが示された。
国の責任で国保改善を
 国保の都道府県化による国保料と国庫負担の変動の見込みについて、国保料については34市町、国庫負担については37市町が「わからない」と回答しており、当事者である各自治体ですら都道府県化の効果が分からない実情が明らかとなった。厚労省は、都道府県化に合わせて毎年3400億円の追加支援を開始するため財政基盤が安定するとしているが、これは自治体の独自繰り入れよりも少なく、財政の立て直しにつながるとはとても言えない。
 調査によって、国保加入世帯の6割が減免制度を利用し、4世帯に1世帯が滞納、さらには保険証を持っていない世帯数が4万を超えているなど、県下の国保の厳しい現状が明らかとなったが、これらの問題の根本には、国保料があまりにも高すぎるという原因がある。国保料が支払えないほど高騰しているのは、国が国庫負担率を引き下げてきた結果である。国保は市民の助け合いの制度ではなく、国の社会保障制度の大切な柱の一つであり、国には責任を持って安定した運営を行う義務がある。国保の健全な運営のためにも、国庫負担率を抜本的に引き上げることが求められる。

 調査は、県下全41市町に対し実施。昨年12月1日時点での保険証交付数、資格証明書、短期保険証の発行、減免制度、差し押さえ件数などを聞いた。
表 国保保険証の未交付数、差し押さえ件数
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