兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年8月25日(1822号) ピックアップニュース

「熊本震災から4か月〜被災地の医療−生活の課題」
復興へつながり活かそう
熊本の医師・歯科医師ら4人が報告

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会場からも被災地を訪問した経験など活発な意見が出された

 甚大な被害を及ぼした熊本地震から4カ月、被災地の人々が抱える医療・生活の課題とは−−。協会は8月6日、第25回日常診療経験交流会(10月30日、神戸市産業振興センター)プレ企画として「熊本震災から4か月〜被災地の医療−生活の課題」を県農業会館で開催。現地の医師、歯科医師ら4人が、発災直後の状況や医療的課題などについて報告し、95人が聞き入った。

 兵庫協会は4月の熊本地震の直後から、役員・事務局が地元協会や被災医療機関のお見舞い、被害状況の確認を行うなど、訪問を重ねてきた。本企画は、これらの経験から、地震直後や現在の生活と医療の課題を共有し、今後全国・各地域で連携を広げていこうと、熊本協会と保団連の協力を受け、開催したもの。
 熊本市東区にある本庄内科病院の本庄弘次院長(熊本協会常任理事)は、地震により病院のスプリンクラーが誤作動し全館が水浸しになるなど、大きな被害を受けた。スタッフの安否確認も難しく、待合室には近所の住民が避難している中、病院としての機能発揮が求められ、一時デイケアを休止するなどの対応で診療を継続、入院機能も保持することができたと、振り返った。そして、医療機関の復興のため、院内に復興対策委員会をすばやく立ち上げ、問題や改善点を共有する体制をつくった経験から、職員の不安解消をはかり、各職場の復興計画は職員自身が考えていくことが大事だとした。また、保団連・協会の迅速な訪問、募金に、感謝の言葉を述べた。
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被災経験を語る(左上から時計回りに)本庄弘次先生、山口彩子先生、ディヌーシャ・ランブクピティヤ氏、村本奈穂氏

 歯科医師の山口彩子先生(菊陽町・菊陽病院)は、災害時の歯ブラシの効果として、誤嚥性肺炎、歯周病・虫歯予防に加え、日常的な動作を行うことで平常心を取り戻す効果もあるのではとの考えを示し、橋やトンネルなどが崩落し、交通が遮断された南阿蘇村で、医療チームとともに、避難所、介護施設を訪問した経験を語った。
 南阿蘇村の村本奈穂氏(歯科衛生士・介護老人保健施設リハセンターひばり)は、誤嚥性肺炎を防ぐことが歯科衛生士である自身の役割であると考え、避難所や介護施設を回ったことを紹介し、被災者に対する口腔ケアでは、住民の方の話を傾聴し、共感することが大切だと述べた。
 スリランカ出身のディヌーシャ・ランブクピティヤ氏(崇城大学専任教員、比較社会文化)は、4月に熊本へ引っ越した直後に地震に遭い、家族とともに小学校に避難し、長期にわたり車中泊を続けていた。避難所で外国人として孤立感や不安を感じたこと、声を掛け合い、互いに助け合うことの大切さを感じ、避難所でスリランカカレーを作って配り、励まし合った経験などを語った。

〝人災は防げる〟杉山保団連理事が発言
 ゲスト・コメンテーターとして、被災直後から何度も被災地を訪れている杉山正隆保団連理事(福岡歯科協会副会長)が発言。地震は天災だが人災でもあり、熊本地震では行政などが「初めて」だからと対応が不十分だったなどと発言しており、これまでの阪神・淡路や東日本大震災の経験があまり活かせていないと指摘。そして、震災の経験をつなぎ、保団連も国に被災者支援を求めていくと語った。
 JMAT兵庫に歯科医師として初めて参加した、足立了平兵庫協会理事(神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科教授)が特別発言し、阪神・淡路大震災で誤嚥性肺炎が蔓延し、震災関連死を生んでしまった反省から、災害時の口腔ケアの重要性を知らせていくことをライフワークとしているとして、災害は努力で軽減できると強調した。




第25回日常診療経験交流会
メインテーマ「人生を豊かにする医療へ〜まなび、気づき、そして踏み出す」
日 時 10月30日(日)10時〜17時
会 場 神戸市産業振興センター(JR神戸駅東)
内 容 分科会/医科・歯科・薬科交流企画/救急フェスタ−CPR講習会/
ポスターセッション/情報ネットワーク/医院新聞/文化部展示会/
県下特産品抽選会/薬科部企画ほか
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