兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年10月25日(1828号) ピックアップニュース

財務省が「登録医」制度の導入など提案
撤回求める ドクター署名にご協力を

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FAXでお届けする署名用紙

 「かかりつけ医」を指定しそれ以外の医療機関を受診すると定額負担、入院時の光熱水費を患者負担に、介護軽度者への生活援助サービス・福祉用具貸与等の全額自己負担、高齢者の高額療養費と高額介護サービス費上限額引き上げ−−。これら医療・介護制度の改悪案の具体化を、政府は本格的に進めている。協会はこの改悪案について広く知らせ、実現を阻止するため、会員FAX署名に取り組むこととした。ぜひご協力をお願いしたい。

 この署名は、「窓口負担増などの中止を求める要請署名」。要請項目は、患者に「かかりつけ医」以外の受診を制限する受診時定額負担を導入しないこと等6項目(上)となっている。
 医療・介護制度改悪の具体化が議論されている、財務省の財政制度等審議会財政制度分科会で、特に、(1)「かかりつけ医」以外を受診した場合の定額負担の導入、(2)入院時の光熱水費相当額にかかる負担の見直し、(3)スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率のあり方、(4)金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大について、今年度中に結論を出すとされていることを受けたもの。
 署名用紙は、10月中に会員医療機関へFAX送信する。集まった署名は11月17日の中央要請行動で、政府や国会議員へ提出する予定。署名の上、FAXでご返信いただきたい。
〈ご署名をお願いします〉
 FAXが届いたら、ご署名(ゴム印も可)いただき、11月10日までにご返信ください
【返信FAX:078-393−1820】

解説(上)
医療改悪案つぎつぎ
「登録医」以外の受診は追加負担
 財務省の財政制度等審議会の資料では「一定の要件を満たす診療所等について、患者が『かかりつけ医』として指定(し、)保険者に登録」「耳鼻科や眼科など特定の診療科については、予め『かかりつけ医』と相談のうえ指定する」とされている。
 つまり、登録した「かかりつけ医」と、その「かかりつけ医」と相談して指定した耳鼻科や眼科以外を受診すれば、これまでの窓口負担に加え、さらに特定額を負担しなければならないということである。
 同審議会は「諸外国と比較して、我が国の外来受診頻度は高く、多くは少額受診」と述べ、「軽微な受診」を経済的に制限することを狙っている。
 しかし、経済力によって受診できる医療機関の選択肢に差をつけるのは公平ではない。また、疾患の早期発見、早期治療にとって重要な、患者のフリーアクセスを制限することは、だれでも、どこでも、保険証1枚で同じ負担で最適な医療を受けられるという国民皆保険制度の特徴を変質させるものである。
 また、同審議会は「総合診療医の養成・定着が進むまでの経過措置...」と、「新専門医制度」のもとで新たに創設される総合診療専門医が、将来的には「かかりつけ医」としてすべての診療科の1次診療にあたることを想定している。しかし、総合診療専門医がどれほどの数になるのか、現在の開業医との関係はどうなるのか明らかになっておらず、極めてずさんな議論である。
漢方薬や目薬、胃薬は保険外に
 同審議会では「スイッチOTC」と呼ばれる、処方薬を薬局で買えるようにした薬品について、保険給付の対象から外すなどとし、その理由は「小さなリスク(少額の負担)には自ら対応すること(セルフメディケーション)が重要」であるとしている。
 医療機関を受診させず、患者の自己判断による服薬を推奨することは患者の命と健康を危険にさらすものである。
 これまで国民皆保険制度は、軽症のうちから受診機会を十分に保障することによって、重篤化を防ぎ国民の健康を守ってきた。国の政策として、セルフメディケーションを国民に促すことは、これに真っ向から反し、医師の役割を軽視し、医療における国の責任を大きく後退させるものである。
医療費削減の裏で企業減税や大型公共事業
 これらの医療制度改悪案の背景には、昨年度から3年間にわたり社会保障費の伸びを5千億円以下に抑制するという政府の方針がある。これは社会保障費の自然増が毎年1兆円から8千億円といわれていることから、毎年5千億円から3千億円の社会保障費抑制を行うということである。
 この社会保障費抑制の理由を、政府は財政赤字解消のためとしている。
 しかし、政府は今年度も法人実効税率を29.97%に引き下げ、その減税額は7280億円に上ると試算している。さらに、補正予算で、訪日外国人を増やすとして港湾や空港の整備に3828億円を投じるとしている。こうした一部の黒字企業にしか恩恵のない減税や、財政赤字下では必要性に乏しいと思われる大型公共事業を一部でも見直せば、これほどの社会保障費抑制を行う必要はない。
 社会保障を充実させて内需を拡大してこそ、持続的な経済成長は可能となるし、持続的な経済成長なくしては、国家財政の好転も望めない。安倍政権には国民の命と健康を守るために社会保障制度改悪ではなく、むしろ社会保障制度の充実こそが望まれている。
(次号につづく)
図 財政制度等審議会の「かかりつけ医」のイメージ
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