兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2016年11月15日(1830号) ピックアップニュース

燭心

 口腔底炎は下顎前歯の内側と舌の間が腫れあがり、舌が上下に二つあるように見えることから二重舌とよばれる症状を呈することがある。この部位は組織が空疎でバリアーとなる骨もないことから小さな筋肉の隙間をぬって炎症は容易に頸部、胸部に波及して重症化しやすい。炎症の拡大を防ぐには早期に切開して膿を出し、抗菌剤を投与することが肝要だ▼一般的に二つの舌を使い分ける二枚舌人間は信用されない。この国の政府は唯一の戦争被爆国として核廃絶を唱える姿とは裏腹に、国連の核禁止条約の交渉開始決議に反対し、核保有国にすり寄る姿勢を明確にした。123カ国が賛成する中、広島選出の外務大臣が反対理由を弁明する構図も異様だ▼今回の決議にあたっては同盟国などに対して反対追従を求める米国の圧力があった。米大統領の広島訪問時の言葉はまさに二枚舌、その時の日本の首相の演説を思い返すとこちらも顔が紅くなるほどの二枚舌だ▼「国民の安全を守る」が口癖の首相は、憲法違反の集団的自衛権を行使しPKO駆けつけ警護で自衛隊員の生命を危険にさらす。「国民に向け丁寧な説明」も首相の常套句だが、これも丁寧な説明がないままに強行採決が繰り返される▼炎症が生体の防御反応であるにもかかわらず、自身の体を危機に追い込んでいくという二枚舌性を持つように、わが国の二枚舌もまた、早く切って膿を出さないと取り返しのつかない全身症状を引き起こすことになる。(九)
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