兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年1月05日(1834号) ピックアップニュース

県行革第1次案を井戸知事が提案
マル老要件に「要介護2以上」 「未就労」の要件は撤回

 兵庫県の井戸敏三知事は、12月14日に開かれた第6回行財政構造改革調査特別委員会で、企画部会案を一部修正した「最終2カ年行財政構造改革推進方策(第一次案)」を提案。企画部会案で盛り込まれていた老人医療費助成制度マル老の見直し案(前号既報)についても、一部修正を行った。

 同制度の見直しは、当初の企画部会案では、「低所得者1」の場合に「就業が困難な者」、「低所得者2」の場合に「要介護2以上」という要件を追加するものだったが、第1次案では「低所得者1」に「就業が困難な者」を追加する案は撤回した。しかし「低所得者2」に「要介護2以上」を追加する案は、企画部会案のまま提案された。
 「低所得者2」の所得制限は「(1)市町村民税非課税世帯で、(2)本人の年金収入を加えた所得が80万円以下」というもので、「...年金収入を加えた所得...」とあるように、年金収入のみを要件とする「低所得者1」と異なり、年金以外の就労収入等も認めるもの。
 例えば、年収60万円の老齢基礎年金と、パート就労などで年収84万円、合計144万円 (月額12万円) で生活している場合、就労「所得」は、年収84万円から給与所得控除65万円を控除した19万円となる。年金収入60万円と合算すると79万円となり、基準の80万円以下となり、対象者になる。
 しかし、新たに「要介護2以上」という要件を追加すれば、事実上、就労者は排除されてしまう。「要介護2」は、「歩行」が自力ではできない、「衣服着脱」に見守り等が必要など中等度の介護を要する状態で、こうした高齢者の就労がいかに困難であるかは言うまでもない。
 県の試算によると、これによって削減される県費は1億2300万円。15年間の井戸県政のもとで、老人医療費助成制度の所得制限は4回改定され、そのつど対象者は大幅に削減されてきた。井戸県政の前、貝原県政時代の老人医療費助成予算は83億円だったが、今年度には5億6千万円まで削られ、対象者は20万人から2万人まで削減されてきた。これ以上老人福祉を削る必要が果たしてあるのか、福祉に対する井戸知事の姿勢が問われている。
 県は同案に対するパブリックコメント募集を12月15日から1月6日まで行い、協会は制度の継続を求める意見書を提出した。

〈老人医療費助成制度 マル老見直しのポイント〉

・現行制度は廃止し、高齢期移行助成事業(仮称)創設(実態は名称変更)
・現行制度の「低所得者1」は、「区分Ⅰ」と名称をあらため、内容は継続
・現行制度の「低所得者2」は、「区分Ⅱ」と名称をあらため、要件に「要介護2以上」を追加
・対象年齢、所得制限、一部負担金などは、現行制度のまま
・実施時期は2017年7月。現在の受給者は70歳になるまで助成を継続する
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