兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年2月05日(1836号) ピックアップニュース

燭心

 医療現場では何にもまして安全対策が優先する。医療安全の柱の一つに感染対策がある。感染微生物を自分から周囲に、周囲から自分に伝染させないという院内感染予防の基本は、手洗いだ。だから、医療者は潔癖症かと思うくらいに手を洗う。しかし、人間はあまりに清潔すぎる環境に身を置くと、かえって脆弱になるともいわれる▼意外なといっては失礼だが、トランプ氏は相当な潔癖症らしい。有権者との握手も苦手なのだと自身の潔癖性をカミングアウトして話題を呼んだ。そのトランプ氏が1月20日、米国大統領に就任した。世界80カ国で480万人が反対デモに参加し、就任式では多くの連邦議員が欠席した。ハリウッドの有名人も拒否的な態度をみせたが、かつてトランプ氏に対して厳しい発言をしていた映画監督のオリバー・ストーン氏は、あながち悪くないと前言を翻す▼彼の評価はこうだ。トランプは『アメリカ・ファースト』を掲げており、他国の悪を倒しに行こうなどと言わない。クリントンは、米国による世界秩序のためには他国の体制をも変えるべきと信じており攻撃的だ。もし大統領になっていればさらに世界中で戦争や爆撃が増えただろうと▼評価はまちまちだが、TPPからの離脱、軍備増強、移民排斥、国境の壁など、まるで院内感染予防のような政策実現に奔走している。内向きの潔癖症であるトランプ氏が安心の要になるのか悪疫の主になるのか、今後の姿をじっくりと見てみたい(九)
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