兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年4月15日(1843号) ピックアップニュース

兵庫県知事選挙にあたって
基本方針・重点要求(案)を承認

 協会理事会は3月25日、兵庫県知事選挙(6月15日告示・7月2日投開票)に向けて、今次選挙をこれまで掲げてきた要求を実現するための重要な機会として位置づけるなどとする方針案・重点要求案を承認した。この方針案は、福祉医療制度の縮小を進めるなど、県民の生命と健康を守る立場とはほど遠い井戸県政の問題点を指摘し、県政の転換をめざして憲法県政の会候補者を支持推薦するもの。1月14日の理事会で、全支部・専門部の討議を要請してきたもので、要求への意見と方針案への賛意が寄せられた。全文を掲載する。

2017年県知事選挙への対応
はじめに
 県には、県立病院の運営をはじめ、地域医療構想や地域医療計画の策定、福祉医療費助成制度の整備、保健所の運営など、県民に提供する医療の在り方や公衆衛生を左右する権限がある。さらに、大規模災害をはじめ、原子力発電所における事故リスクや新たな貿易協定による産業構造の急激な変化から県民の命とくらしを守る役割も持つ。また、国政につながるこれらの問題や憲法改正議論などに対し、県民の意思を代表するという県知事の役割も重要性を増している。
 こうしたことから、私たちは今次知事選挙を、県政における医療・社会保障に関係する課題はもとより、国政における課題も含めて、これまで私たちが掲げてきた要求を実現するための重要な機会として位置づけるものである。
1、経過(これまでの知事選挙への協会のかかわり)
 協会は、民主的討論を経た上で、首長選挙については、「開業保険医の要求」を受け入れ、これを実現する無党派の候補者を推薦し、選挙母体に参加して必要な活動を行うことはあり得るとの立場をとってきた。同時に、この場合においても個々の会員の思想・信条・政治活動の自由を保障する立場から、実際の活動は協会とは別に自主的な会を有志で組織し、行ってきた。
 前回2013年知事選挙では、協会理事会は基本方針案、知事選挙に当たっての要求案を作成し、歯科部会及び全支部討議を呼びかけた。歯科部会と9支部が方針案について了承(2支部は時間的に未討議)したもとで、理事会は方針案を承認し、「憲法が輝く兵庫県政をつくる会」が擁立した兵庫県商工団体連合会常任理事・明石民主商工会事務局長の田中耕太郎氏(憲法県政の会代表幹事)を、2009年知事選挙に続いて、候補者として推薦した。
 36団体が加盟する「憲法が輝く兵庫県政をつくる会」(以下、憲法県政の会)は、日常的に県政の課題に取り組み、時々の県政に関する課題とその解決の方向性を明らかにした書籍「ウィーラブ兵庫」の発行や、シンポジウム、県政学習会などに取り組んできた。協会は、憲法県政の会に加盟し、武村義人副理事長が代表幹事を務めている。こうした関係の中で協会は、憲法県政の会がさらに多くの県民や県内のさまざまな団体の共同の場として発展するよう尽力してきた。
2、井戸県政をどうみるか
 前回知事選挙で、私たちは井戸県政について、阪神・淡路大震災被災者の借り上げ住宅問題、県立こども病院のポートアイランド移転、無料化に背を向けるこどもの医療費助成制度、財政健全化と称する「何でも3割カット」の行革、公約違反のマル老の所得制限改悪、神戸空港の推進、国政に追随するだけの介護保険、利用者の少ない但馬空港への税金投入、パナソニック1社に200億円以上もの税金投入など、国の「構造改革」路線に追随する県政であるなどの分析を行った。また、井戸知事の「医療にも事業税を課税すべき」との発言も許されるべきでないとの立場をとった。
 また、井戸知事は、国政分野における課題でも、TPP交渉への参加の容認、地方財源確保を理由にした消費税増税賛成、原発再稼働容認など、県民の要求や不安に背を向ける態度をとってきた。これらの井戸知事の態度は、協会の県政要求実現には程遠いものであった。
 前回知事選挙以後も、これらの基本方向は変わっておらず、さらに福祉医療費助成制度において母子家庭等医療費助成の所得制限強化を行った他、昨年11月には、「最終2カ年行革プラン案」で、またしても老人医療費助成事業の改悪を提案している。原発に関しても、各知事が再稼動容認に慎重な姿勢をとる中、関西広域連合長として、再稼動容認の立場で各県に積極的に働きかけまで行った。
 私たちは、こうした井戸県政に対する分析から、この県政をこのまま続けるのではなく、住民の生命と健康を守る県政に転換することの重要性を痛感するものである。
3、開業保険医の要求案を実現させよう
 我々は、県民医療の改善等、別記の要求の実現を求めるものである。
4、支持推薦と開業医の要求実現について
 今回、憲法県政の会が候補者として擁立した津川知久氏は、協会も参加する「県『行革』ストップ要求実現連絡会」の運動を支えてきた兵庫県高等学校教職員組合の元委員長であり、一党一派に偏せず、広範な県民の支持を得る条件があると判断する。今回は会内で十分に討議する時間的条件もあり、民主的な討議を尽くし、協会の要求をもとに政策協定を行ったうえで、支持推薦を行うこととしたい。ただし、直接的な選挙支援の活動は、これまでの県知事選挙同様、有志の会で行うこととする。
5、会員への情報提供
 協会の要求案や候補者の政策など、会員への情報提供につとめる。
以上

2017年兵庫県知事選挙にあたっての
開業保険医の重点要求(第1次案)
はじめに
 4期16年にわたる井戸県政のもと、県民の医療、福祉は、行財政構造改革の名で削減されつづけてきた。この県政の姿勢をもっとも特徴付けるものが、老人医療費助成事業の改悪である。対象者は井戸県政以前の21万人(2000年)から2016年には2万人まで削減され、今後1・2万人まで削減されようとしている。公立病院についても、県は県下各地で統廃合や移転統合をすすめてきた。各地の県民・医療担当者の運動によって、一定の修正を行わせるなどの成果もあるが、国の方針のままに病床削減をすすめる県の姿勢は、地域医療に責任をもつ姿勢とは言いがたい。
 我々は、2017年知事選挙を下記の要求実現の絶好の機会として、実現のために奮闘するものである。
Ⅰ、国政の重要課題について
1、患者負担増による医療改革に反対すること
 安倍内閣は、医療への国庫負担削減のために、患者負担増をさらに推進しようとしている。当面の高齢者負担増をはじめ、受診時定額負担やOTC薬の保険はずしなどは必要な受診を抑制するものであり、断じて許されない。県政は、こうした患者負担増の医療改悪に断固反対すべきである。
2、危険な日米2カ国間自由貿易協議から国民皆保険を守ること
 TPPはアメリカの離脱宣言によって実効力を失ったが、トランプ米国大統領が求める日米2カ国間協議は、TPPを土台にさらにアメリカに有利な協定となる可能性はきわめて強く、国民皆保険制度が空洞化される危険性が高い。国民皆保険を守るために、2カ国間協議に応じないよう求めるべきである。
3、原発ゼロをめざし、再生可能エネルギーへの転換をめざすこと
 史上最悪の被害をもたらした福島第1原発事故に対して、未だ収束できず検証も不十分な中で、原発の再稼働は断じて容認できない。福井県の原発の再稼動に反対し、全原発を廃炉にする道に踏み出すよう求めること。同時に、日本は再生可能エネルギーの宝庫であり、再生可能エネルギーへの転換を促進すること。
4、社会保障改悪と消費税増税に反対すること
 「社会保障・税一体改革」と称する社会保障制度改革の実態は、企業の巨額の内部留保には目をつぶり、社会保障給付を削減するものである。法人税率を引き下げる一方で、社会保障にまわす財源がないとの政府の説明は、国民をいつわるものである。消費税増税に反対し、社会保障の財源は内部留保を増加させている大企業の法人税増税や、富裕層への増税など、応能負担の原則に基づいた財源の確保を求めるべきである。
5、東日本大震災被災者の生活復興を支援すること
 東日本大震災から6年となるが、被災者の生活再建はままならず、原発事故による避難は想像を絶する苦難をもたらしている。少なくとも生活を復興できるまでは医療費窓口負担助成を国に求めること。仮設住宅の必要な改修とコミュニティを維持すること、避難者への支援を強めることなど、被災者の生活復興を最大目標に掲げた支援に尽力すること。県外「自主」避難者への住宅を無償提供すること。
6、憲法を守り、社会保障を基盤とした県政をめざすこと
 国民主権のもと立憲主義の立場にたつ現憲法の改悪は、断じて許されない。憲法第9条、第25条は、社会保障の基盤であり、国民皆保険の土台である。憲法25条の実現をめざすことを強く求めること。
Ⅱ、県民の生活と安全を守る県政に
1、医療・福祉制度を拡充すること
(1)老人医療費助成の対象を拡大し、65歳以上の高齢者は1割負担となるよう医療保険制度との差額を助成すること。
(2)母子家庭等医療費助成の所得制限を、児童扶養手当の一部支給の所得制限まで緩和すること。
(3)入院給食費助成を復活すること。
(4)こども医療費は、県下市町の努力でその9割が中学3年生まで自己負担を無料にしている。市町まかせでなく、県の責任で「中3まで無料」を実現すること。さらに高校3年生まで無料をめざすこと。
(5)福祉医療対象者の薬局における患者負担を廃止すること。
(6)妊産婦健診助成を拡充すること。
(7)歯科検診と妊産婦歯科検診を、どの歯科医院でも無料で受けられるようにすること。
(8)予防接種事業は原則無料とし、全員が平等に受けられるようにすること。
(9)介護保険制度の保険料・利用料について独自の減免制度をもうけること。
(10)介護保険制度にかかわるマンパワーを増員し、同時に待遇を改善すること。
(11)生活保護等福祉受給者を監視したり、差別することのないようにすること。
2、総合周産期母子医療センターを整備すること
(1)神戸市西部・東播磨地域における周産期医療と小児救急医療のセンターを整備すること。
3、公的医療機関の機能を充実すること
(1)県立病院は引き続き県立・県営での拡充をおこなうこと。
(2)県立病院をはじめ地域医療を支える診療報酬の引き上げを国に求めるとともに、国による地域医療構想の押しつけに反対すること。
(3)県立病院の職員削減計画をやめ、一般会計からの補助金を増額すること。医療従事者の勤務条件を改善すること。
(4)公立病院の無理な集約化の促進をやめ、医療関係者と住民、地元行政の合意を尊重すること。医師を確保するため直接的な助成を行うこと。
(5)新県立病院改革プランの策定については、高度機能病院への統合によって、病床を削減しないこと。在宅ケアを促進するために、必要なときにいつでも入院できる病床の提供を、公益性を重視する公立病院の責務とし、地域住民の入院要請を断らない公立病院をめざすこと。
(6)先端医療開発を理由とした、メディカルツーリズムや混合診療にみちを開く施策は行わないこと。
(7)地域医療を充実させるため、県立病院をはじめ地域医療を担う医師や医療従事者を増員するなどマンパワーを拡充すること。
4、開業保険医が安心して診療に専念できるようにすること
(1)保険診療に関する監督責任のある県として、次のことに留意すること。審査・指導は「行政手続法」の趣旨にもとづき行わせること。主治医の裁量権を尊重し、医学・医療内容を無視した経済審査や強権的指導・監査を是正すること。事務職員による医療内容の点検関与、レセプト点検の民間委託はやめさせること。
(2)医療廃棄物処理について公費助成を行うこと。
(3)看護師・助産師・介護福祉士の不足を解消するための施策を実施すること。
(4)県下全自治体に歯科検診・予防活動のセンターとなる口腔衛生センターを設立すること。
5、阪神・淡路大震災復興要求
(1)被災者生活再建支援法の改正をふまえ、阪神・淡路大震災被災者の暮らし再建・救済のために特例措置を講ずること。
(2)現段階で返済できない災害援護資金、各種震災関連融資の返済を免除すること。
(3)被災者生活再建支援法の支援限度額引き上げ、半壊・一部損壊世帯・住宅店舗への適用拡大、災害規模による適用条件の廃止を国に求めること。
(4)借り上げ住宅の契約期間を延長し、希望者が安心して住み続けられるようにすること。
(5)民間医療機関の耐震診断、耐震補強に助成すること。
(6)南海トラフ巨大地震に対する防災対策を強めること。
6、不必要な公共事業や環境破壊をやめること
(1)神戸空港や交流の翼港(淡路)、広畑地区大深度岸壁(姫路)など無駄な公共事業への支出を抜本的に見直すこと。
(2)阪神・淡路大震災における解体工事によるアスベスト吸引など、アスベストを曝露した人の実態調査を長期間にわたって行い、住民への啓発活動を強めるとともに、被害者を支援すること。アスベストを含む建物の解体工事などに対して、厳しく監視すること。
(3)温室効果ガス削減の取り組みを強化すること。温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電所の新増設は認めないこと。
(4)高機能道路や幹線道路整備について、住民の納得と合意を尊重し、環境破壊とならないようにすること。
(5)関西電力が神鋼石炭火力発電所の増設に伴い、増設しようとしている超高圧送電線について、予定ルート周辺の電磁波値の公開を関西電力に求めるとともに、ペースメーカーに影響を及ぼす恐れのある基準値超の地点がないよう監督すること。
7、県民のくらしと平和、民主主義を守ること
(1)非核自治体宣言を行うこと。
(2)オスプレイを含む米軍機の訓練飛行が、兵庫県北部のドクターヘリ航域と重複するとされており、支障がおこらないよう尽力すること。
(3)日米地位協定を見直し、オスプレイ配備や辺野古新基地の建設に反対するとともに、過剰な基地負担を抱える沖縄県民に連帯の意思を表明すること。
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