兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年5月25日(1846号) ピックアップニュース

燭心

 今年のゴールデンウィークはのんびり過ごせたはずが、家庭内のゴタゴタに忙殺され思考回路が全く機能せず、爽やかな5月の休暇を楽しむ気になれなかった▼その渦中、娘は独特の自然体で寄り添ってくれた。彼女は酵母が好きで、パン生地を膨らませる可能性のある酵母を数種類育てている。煮沸消毒したガラス瓶に、乾し葡萄を入れ微温湯と栄養になる糖分を加え醗酵を待つ。ガラス瓶で醗酵が進む様子を見るのが楽しいと言う。しかし乾し葡萄に付着している酵母菌は少なく効率が悪いよう。最近は発芽玄米で作った新酒の酒粕を醗酵させ、びっくりするほど元気が良く、大きな食パンができ上がった▼8時間かけ二次醗酵まで進んだパン生地を深夜、私の家へ持参し、最終醗酵させオーブンで焼く。パンの種類で小麦粉の種類や割合を変えているそうで、連休中は毎日色々な種類のパンを味わった。食パン、フランスパン、カンパーニュ、イングリッシュマフィン、赤米の酒粕とビーツで作ったパン、餡パンなど▼酵母と人類の付き合いはほぼ1万年だそう。偶然に神からの授かり物として利用されてきたらしい。多分ワインのことであろう▼酵母の働きが明らかになったのは、わずか150年前、パスツールが知見を論文に記している。そして細胞核を持つ生物の中で最初にゲノムが解読されたのは酵母で1996年のことである。パン作りから、偉大な微生物酵母と人類の関わり方に想いを馳せてみた(硝子)
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