兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年6月15日(1848号) ピックアップニュース

「保険でより良い歯科」連絡会シンポジウム「口から見える貧困」
健康格差解消は社会的対応で

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足立了平・神戸常盤大学短期大学部教授(上)や三上喜美男・神戸新聞論説委員長(下右)、井山和重・子どもの権利条約をすすめる兵庫の会事務局長(下中央)、加藤擁一・協会副理事長(下左)が口から見える貧困について報告した

 口腔崩壊の子をなくすために必要な対応とは−−。協会などでつくる「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会は6月4日、市民シンポジウム「口から見える貧困 健康格差の解消を目指して」を協会会議室で開催。歯科医療関係者、市民ら80人が参加し、口腔崩壊と経済的貧困の現状を、医療、教育、メディアの各分野から多角的に考察した。

 足立了平・協会理事(神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科教授)が「歯科疾患の健康格差とその解消を目指して」と題し基調講演。
 「子どものむし歯は歯磨き習慣を教えない親の責任である」という風潮に対して、疾病を自己責任に帰することに異議を唱え、「低所得者ほど受診を控える」などの大規模調査の研究結果を紹介し、健康格差は知識を行動に移せるだけの時間的・経済的な生活の差から生まれる部分が大きいとした。
 そして、マイケル・マーモット世界医師会長の「健康格差を是正する方法は、どれだけ社会保障に国の予算を使うかだ」との発言を紹介し、口腔崩壊への社会的対応として、(1)健全な医院経営のための診療報酬の増額、(2)窓口負担の軽減・無料化、(3)医療費助成制度の拡充、(4)社会保障の充実、(5)貧富の差を拡大させない経済政策が必要とした。
 パネルディスカッションでは、加藤擁一・協会副理事長、子どもの権利条約をすすめる兵庫の会の井山和重・事務局長、神戸新聞社の三上喜美男・論説委員長が報告。
 加藤副理事長は、協会の「学校歯科治療調査」の結果を報告し、歯科受診を必要とする子どもの未受診率が65%、口腔崩壊の子がいる学校が35.4%にのぼるなどの特徴は、他府県5協会の調査と比較して概ね同様の傾向であるとし、全国的にも同様の状況が推測されるとした。その背景として、「知識・関心がない」だけでなく「時間がない」「お金がない、いくらかかるか心配」という複合した原因があると分析した。
 井山氏は国連子どもの権利委員会に向けての取り組みを紹介。県内の子どもの人権の実態を国連に届けるために、学校歯科治療調査を参考に報告書を作成したいとした。
 三上氏は、シンポジウム企画当日(6月4日)の神戸新聞朝刊の社説で、学校歯科治療調査を取り上げたことを紹介し、学校医への取材で「ここ数年で極端に症状の悪い生徒が散見されるようになった」「幼稚園児にも口腔崩壊が見られる。こうした子どもは口の中を隠そうと会話が少なくなり、消極的な性格になりがちだ」とのコメントがあったとし、今後も協会からの情報発信に期待したいとした。
 冨澤洪基評議員がコーディネーター、吉岡正雄副理事長(連絡会代表世話人)が開会あいさつ、川村雅之副理事長が閉会あいさつを行い、「保険で良い歯科医療の実現を求める」署名の協力を訴えた。終了後、歯の健康相談を行い、3件の相談があった。
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