兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2017年8月25日(1854号) ピックアップニュース

燭心

 初めて赴任した病院の外科部長はとても怖いという噂であったが、医師としての基本を学んだ▼患者を受け持って間もなく、術後翌朝の回診後に別室で言われた。「患者さんの前で腕組みするな」...ちょっと勉強ができて「お医者さん」になって市中病院に出れば患者やコメディカルから「先生、先生」と呼ばれ、それなりの扱いを受ける。でも勘違いするな。患者さんは人生の先輩で、ペーペーの医者がベッドサイドに突っ立ったまま、そのうえ腕組みは失礼だ▼「痛いですか?ではなく、痛かったでしょ、やろ」...手術後は痛いに決まっている。「痛いですか?」では「この先生、何もわかっとらん」となり心を開かない。患者さんの立場で物事を考え、痛みや苦しみを共有しろ▼痛みや苦しみの軽減は私たちの仕事の原点である。大手術から寝たきり、心の病まで、全ては経験できないが、自身の小さな怪我や病気から、想像し共感する事は可能である。それは医師にとって必須の資質かもしれない▼であれば、砲弾や弾丸が飛び交い、破壊と殺傷、略奪の場である世界中の紛争地での痛み、苦しみ、悲しみも想像できるはずである。広島や長崎は当然で沖縄も然り▼「仕方なかった。やむを得ない」などという連中は、利益を上げる当事者か、目を逸らせているか、騙されているか...あるいはかなりの鈍感か無知である。震災や原発事故、最近多発する自然災害も同様だ。お盆の広島で、そのことを再確認した(空)
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