兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年5月25日(1878号) ピックアップニュース

特集 診療報酬改定でどうなる? −(5)機能強化加算・在宅医療(2)−
在宅介護への強引な誘導医師に多大な負担 神崎郡・マサキ医院  正木茂博先生

1878_05.jpg  診療報酬改定が医療現場へ与える影響について、会員の意見を紹介する特集第5回は在宅医療への誘導について、神崎郡の正木茂博先生のインタビューを掲載する。(聞き手は編集部)

 −今次改定は在宅への誘導をいっそう進めるものとなりました。
 在宅を増やして入院医療費を減らそうという政府の意図を感じます。もちろん在宅医療は、住み慣れた家で最期まで過ごすことができるというメリットがありますが、家族の負担を考えると強引な誘導は問題だと思います。
 在宅介護は、介護保険で利用できるサービスにも限界があり、老老介護の世帯では特に負担が大きいでしょう。また、都市部の住宅事情を考えても無理があります。
 −今回「かかりつけ医」機能を評価するとして、「機能強化加算」の新設で、24時間対応する医院に評価が加えられました。
 加算要件である24時間体制の連絡、往診、訪問介護は医師・スタッフに多大な負担を強いるものです。政府が進める医師の長時間労働の是正の議論とも逆行するものだと思います。
 私にも在宅医療を求める患者さんの声はありますが、医師やスタッフの負担を考えると、踏み出すことはできません。そもそも政府が「かかりつけ医」に評価を加えるというのであれば、どの医療機関にも「かかりつけ医」だと思ってくれている患者さんがいるのですから、線引きをすることなく一律に点数を引き上げるべきだと思います。
 −政府は高齢になっても医療の心配なく住み慣れた地域でくらせるよう、地域包括ケアシステムの構築を進めるとしています。
 実現性に疑問を感じます。計画を進めようにも、郡部などの過疎地では、医師不足に加え看護師などスタッフの不足も深刻です。
 介護施設も少なく、本当は退院後に施設に入所したいが、仕方なく在宅で療養せざるを得ないという声をよく聞きます。政府は病床数を減らし、介護老人保健施設などを増やすとしていますが、今次改定では医療機関が併設している介護施設への訪問診療時に算定する在宅患者訪問診療料が大幅に引き下げられました。介護施設の充実に反する改定であり、撤回されるべきでしょう。
 −最後に政府の医療政策について、ご意見をお聞かせください。
 改定のたびに高度な検査などの点数は評価されていますが、それ以外の点数は徐々に下がってきています。アベノミクスでインフレと経済成長をめざすのであれば、個々の点数を徐々に引き上げていくことこそ筋ではないでしょうか。それなのに、政府もマスコミ各紙も、こぞって医療費抑制が急務と打ち出し、マイナス改定を進めるような論調が目立ちます。基本診療料を中心にした点数の大幅引き上げで、社会保障を充実させるよう、協会は厚労省や国会議員への働きかけを強めていただきたいですね。
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