兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年7月15日(1883号) ピックアップニュース

燭心

 例年のことであるがこの季節になると、原水爆禁止世界大会に向けて「平和行進」「平和美術展」などの催しがある。原爆の投下された「広島忌」と「長崎忌」ともに灼熱の夏であるが、俳句の世界ではこの間に夏と秋の変わり目があるという(金子兜太、二つの夏)。趣があるというか少し煩わしさも感じる▼原爆投下に先立つこと4カ月、凄惨を極める沖縄戦が繰り広げられた。米軍の本土上陸を恐れ、時間稼ぎの消耗戦。沖縄の人の4人に1人が亡くなるというあまりにもむごい捨石作戦であった。沖縄戦73年、世界平和を願う「慰霊の日」の式典が6月23日に行われた▼年月が経ち戦争経験者が減り、記憶が薄れつつある中、14歳の少女相良倫子さんが自作の詩〝生きる〟を朗読した。朗読というより一度も原稿を見ることもなく、清らかな瞳をキッと見開き、心の底から大勢の人たちに訴えた。すべてのことばが胸を打つ▼昔からことばには霊力(言霊)が宿っている、また言の葉とは人の心を種として表れ出た葉であるという。種としての人の心は読めないが、人の口から出た(言)の(葉)により託された思いを知ることができる▼戦没者追悼式での安倍首相のあいさつ、全文を見ても何も伝わらない。「...沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります」同じことばでこんなにも次元が異なるものかと驚きを禁じ得ない。心に種がないと出る葉も空虚である。それを見抜いて参加者からは「帰れ!」のヤジがたくさん飛んだ(無)
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