兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年7月25日(1884号) ピックアップニュース

燭心

 昨年12月、東海道新幹線のぞみが台車に亀裂が入ったまま走行した件について、運輸安全委員会が新幹線開業後初めての重大インシデントに認定したことは記憶に新しいところである。インシデントとは、「たまたま事故にはならなかったが、事故が発生するおそれが十分にある事態」を指す。医療においてはヒヤリハットと同義とされる▼医療安全管理においては、ヒヤリハット事例をできるだけ多く集めることが重要である。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300のヒヤリハット事例が存在するというハインリッヒの法則に従えば、ヒヤリとした事例を分析し、根本原因を探って対策することで重大事故を防ぐことができるからだ▼6月18日朝、大阪府北部を震源とするM6・1、最大震度6弱の地震が発生し4人が死亡した。このうち登校途中の女児が下敷きになったブロック塀の倒壊について原因究明が叫ばれている。一方で阪急茨木市駅の行き先表示板の落下についてはほとんど関心が寄せられていない。この表示板は400㎏の重量があり直撃すれば殺傷能力を持つと思われるが、通勤時間帯であったにも関わらずけが人は一人も出なかった。しかし、これは明らかにヒヤリハット事例である。たまたま落下した先に人がいなかったという偶然から重大な事態に至らなかっただけで、次は人の頭を直撃するかもしれないのだ。鉄道会社には安全管理の面からこの表示板の設置方法について再考願いたい。(九)
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