兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年8月25日(1886号) ピックアップニュース

燭心

 豪雨と猛暑の夏だった。とりわけ200人を超える犠牲者が出た、7月の水害はいたましい。機会があって被災地を訪ねてみた。広島県坂町、広島市の南隣にある町である。今月2日にJR呉線が一部復旧して、この町までつながった。長靴を持ったボランティアの若者たちといっしょに、電車に乗り込んだ▼坂駅の改札を出ると、風に泥の臭いを感じる。被害が大きかった総頭川に沿って歩く。流木と土砂が入り混じり、民家になだれ込んでいる。道路はあらかた片付けられてはいるが、埃っぽくてぬかるんでいる。医院は休診の札がかかったままだ。水がないのだろうか、「誰でも使ってください」と書いたポリタンクが置いてある。氾濫したのは、どこにでもあるような幅数mの小さな川だ。どこからこんな土砂がと思うくらい、ひどい所では胸の高さまで泥に埋もれている▼文字通り坂の町だ。山と海が近く、神戸に似た地形である。ここでは16人が犠牲になり、1人が行方不明とのことである。町のホームページには「潮の香りと、緑豊かな町」とある。きっと住みよい町だったのだろう。一日も早い復興を祈る▼私たちも他人事ではない。兵庫協会の会員も、このたびの水害で50件以上が被災した。国の責任で復興を進めるよう、私たちは被災者生活再建支援法の改正を求めて運動を続けてきた。阪神・淡路大震災を経験した私たちの責務と思う。意気消沈している人も多かろうが、生きていれば明日はある。23年前の教訓を伝えたい。(星)
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