兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2018年8月25日(1886号) ピックアップニュース

日常診 震災企画 原発事故 市民の避難最後まで
桜井前南相馬市長が経験語る

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東日本大震災での住民避難と復興の取り組みについて語る桜井氏

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8回目となる震災企画に105人が参加した

 協会は8月4日に、第27回日常診療経験交流会(日常診・10月28日開催)のプレ企画として、震災企画「放射能を背負って〜世界史的災害の現場で考えたこと」(薬科部共催)を県農業会館で開催。会員や医療スタッフなど105人が参加した。日常診の震災企画は、東日本大震災以来毎年開催し、今回で8回目。
 福島県南相馬市前市長の桜井勝延氏が同テーマで講演したほか、「外国人の見た巨大災害」と題して、東日本大震災・熊本地震を日本で体験した外国人5人が報告した。
 桜井氏は、地震・津波被害に加えて原発事故への対応を迫られた発災直後の状況や、避難した住民が帰還し元の生活に戻れるよう、復旧・復興に全力で取り組んできたことなど、南相馬市長時代を振り返った。
 原発事故直後には、行き先が明示されないまま国から避難指示が出され混乱したことや、畜産農家が牛などの家畜を放置して避難せざるを得なかった状況を説明。行政の責任者として、それぞれが家族を抱え困難に直面する市職員に対し「生存権をうたった日本国憲法の遵守の決意を今こそ」と呼びかけ、市役所を移すことなく、最後の1人まで市民の避難を支えようと訴えたことを紹介した。復興過程では、自ら何度も中央官庁に足を運び、直接担当官僚に面会して個別の課題の解決に奔走した経験を語った。
 講演に先立ち、生田チサト看護師(南相馬市・大町病院)が講師を紹介した。
 「外国人の見た巨大災害」では、ロビン・ロイド氏(米国・民族音楽家)、アブドゥルラッハマン・ギュルベヤズ氏(ドイツ・サラハディン大学言語学部教授)、ディヌーシャ・ランブクピティヤ氏(スリランカ・久留米大学外国語教育研究所講師)、バイマー・ヤンジン氏(チベット・声楽家)、ニコラ・エスピナス氏(フランス・フォトグラファー)が報告。日本人と比べ、限られた人間関係しかない中での被災に孤立感を深めた経験や、日本政府やメディアから発信されていた情報への不信感などを語った。
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