兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年1月25日(1899号) ピックアップニュース

燭心

 自分史の中で転機となった出来事を挙げるとすれば、70年安保前後から72年の沖縄返還までの一連の動乱と1995年の阪神・淡路大震災だろうか。前者は多感な高校生、後者は41歳の脂の乗った医療人として、自らの将来に対して希望や目標を抱いていた時期に起こった▼時空を超えたこの二つの出来事は、気づきと行動することの意味を教えてくれたという公約数を持つ。国や地域のありようが何かおかしいことに気づく、何かしなくてはというそわそわした気分になる。気づいてしまったのに何もしないでいることの罪悪感がその時の原動力だったように思う▼「気づき」は、医療や看護の世界でもよく使われる言葉だが、気づくことが重要なのではない。それを基に行動につなげてこそ意味を持つのだ。刻々と変化する災害現場において、臨機応変に対応できるしなやかな頭脳と即座に動ける身体の必要性は24年前の震災で気づいたことの一つであるが、その泉源は高校時代まで遡るのかもしれない▼年末、新聞のコラムに「辺野古埋める『行動なき良心』」という見出しが躍った。「変革は行動する良心にしかできない、行動なき良心は悪の側にいる」という金大中氏の発言が引用されていた。今、辺野古の埋立てに抗議する「行動する良心」に対して容赦のない攻撃が存在する。その攻撃を支えているのは、膨大な数の「行動なき良心」と無関心なのだと心得たい。政権の理不尽さに世界中が気づいた今こそ意思を行動で示したい(九)
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