兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年6月05日(1911号) ピックアップニュース

第95回評議員会を開催 社会保障拡充の道を進もう

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100人が出席し、社会保障政策、審査指導問題や支部の活動などさまざまな発言が出され、決議を拍手で承認した

 医療・社会保障の充実を堂々と訴えていこう--。協会は5月19日、協会会議室で第95回評議員会を開催。評議員ら100人が参加し、2018年度会務報告と19年度方針案、予算案の総会上程を可決し、西山裕康理事長ら役員を選出した。診療報酬・介護報酬引き上げ、患者窓口負担増計画の中止、医師数の抜本的な増加などを求める決議を採択した。また、「今、日本に必要な金融・経済・財政政策」と題し、京都大学大学院工学研究科教授・元内閣官房参与の藤井聡氏が特別講演を行った。(次号に発言要旨を掲載予定)

 西山裕康理事長は開会あいさつで、政府の患者負担増計画や保険給付範囲の縮小計画を批判。医療費の増加は医療の高度化によるところが大きいとして、「国民の命と健康を守る医療者の団体として、財源論にとらわれることなく必要で最適な医療を求めていくべきだ。他の先進国のように経済成長と社会保障の充実を両立させることが必要だ」と、医療・社会保障充実へ、政府の政策転換を訴えた。
 武村義人副理事長が、会務報告と方針案を提案。協会が行った、「ストップ!患者負担増」署名やクイズチラシなどの大型宣伝企画、研究会活動や審査・指導対策、震災復興と災害対策などについて報告。2019年度方針として「引き続き『頼りになり、役立つ協会』となるよう努め、広範な国民・市民と共同して、安倍政権が計画する新たな患者負担増に反対し、医療費の総枠拡大、社会保障拡充、憲法と平和を守る運動、震災被災者の生活再建を求める取り組みを進め、政治の転換に力を尽くす」と提案した。
 討論では、医師の働き方と急性期病床削減問題、尼崎市による生活保護指定医療機関に対する個別指導問題、憲法改悪反対、アスベストによる健康被害の再検証、社会保障の財源問題など、安倍政権の社会保障政策や審査指導問題、各支部の活動などについて、18人から発言があった。
記念講演
「消費税増税は財政を悪化させる」
藤井聡京大大学院教授が講演
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内閣官房参与を務め、現政権に精通した藤井聡氏が講演

 特別講演では元内閣官房参与として、消費税増税の中止を安倍首相に進言してきた藤井聡氏が、消費税増税がもたらす日本経済への悪影響と、消費税に頼らずに社会保障財源を確保する道について語った。
 藤井氏は、8%への消費税増税による民間消費支出の落ち込みはリーマンショック以上だったと、データを示しながら解説。この原因には、増税によってサラリーマンの実質賃金が10%近くも急落したまま、一向に回復していないことがあるとした。
 政府が、景気は回復傾向にあるとして10月の消費税増税を強行しようとしていることについては、輸出大企業の好業績はアメリカなど海外の景気が好調だったからであり、国内の中小企業の景況感は2014年の消費税増税以降一向に回復していないと説明。この状況下で消費税増税を強行すれば、国内の消費がよりいっそう落ち込み、消費不況を引き起こすのは明らかだとして、10月の消費税増税は絶対にやめるべきだと訴えた。
 医療・社会保障財源について、社会保障費の増大が財政を圧迫しているとの政府の説明に対しては、税収不足の原因は、日本のGDPが1997年の消費税増税以降縮小しているためだと解説。日本のGDP世界シェアが1995年以降の20年間で17.5%から5.9%へと3分の1にまで縮小していることを示し、消費税増税により日本は世界で唯一の衰退途上国となっていると政府の経済政策を痛烈に批判した。
 最後に藤井氏は、消費税減税により国内景気を浮揚させ、法人税を昔の水準に引き上げる税制改革、民間の成長を促す政府投資を拡大させる財政改革と、労働者の賃上げや物価上昇を促す構造改革により、消費税に頼らずとも経済成長と、医療・社会保障費の財源確保が両立できると、財政への処方箋を示した。
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