兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年11月05日(1925号) ピックアップニュース

燭心

 ツリガネベンケイソウは、葉の一部から新芽を出し、本来の親の姿に再生する。樹木は挿し木として、発根、発芽させて新苗を得られる▼植物は6億年以上前に動物と袂を分かった。それは集中と分散という語に要約できる。人類は万物の霊長と自惚れているが、本当にそれほど進化しているのか? 中枢神経という一極集中型の制御機構を有し、外からの刺激に対して迅速に反応するが、中央集権的制御は、脆弱(ぜいじゃく)なものでもある。高度の神経機能が集中する大脳前頭葉が障害されると認知症となるし、心臓に弓矢が刺さると即死する▼植物は必要なエネルギーを太陽から得て、体中の葉で呼吸し、大脳のような制御センターがなくても、相互に協力する分散型構造である。大災害に耐え、環境の変化にも強い。台風15号による千葉の停電は長引き、住民の生活に大きな支障を来したが、県下にある天然ガス発電や太陽光発電を行っている場所は早期に復旧した。これは何を意味するか?巨大な原発や火力発電所からの送電線は、中枢神経の脊髄のごとく本幹を損傷したら全滅するが、地産地消型の発電は災害に強い▼同様に首都一極に政治、経済を集中させるのは危険この上ない。地球温暖化により、さらに強い台風や大地震が必ず日本を襲うだろう。殷鑑遠からず。災害に強い分散構造を有する植物の根は、網目状に張り巡らされた感覚器であり、人類社会におけるインターネットと類似している。植物に習って国土を分散進化すべきだ。(鼻)
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