兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2019年12月05日(1928号) ピックアップニュース

第96回評議員会を開催
医療の拡充へ診療報酬引き上げを
「医療・社会保障改善を」17人が発言

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評議員会に101人が参加し、診療報酬引き上げ等を求める決議を承認した

 政府が計画する患者負担増と診療報酬マイナス改定に反対しよう--。協会は11月17日、第96回評議員会・臨時(決算)総会・第42回共済制度委員会を開催。評議員ら101人が参加し、2019年度前半期会務報告と後半期の重点課題、決議を承認した。特別講演では、立命館大学産業社会学部特任教授の唐鎌直義氏が「高齢者の生活実態と社会保障制度の課題」をテーマに講演した(次号で詳報予定)。

 開会あいさつで西山裕康理事長は、「政府は診療報酬マイナス改定により医療のコストを抑制する一方で、患者負担を引き上げてアクセスをも制限しようとしている」「診療報酬を引き上げて、すべての患者さんに安全・安心の医療を提供できるようにするとともに、受診抑制や重症化の危険を高める患者窓口負担の増加には反対しよう」と述べた。
 武村義人副理事長が前半期の会務報告を行い、後半期の重点課題として、「安倍政権の新たな患者負担増計画に反対し、広範な国民・団体と共同して運動を進める」と報告した。
 討論では「地域医療構想の民間病院に及ぼす影響」「地球温暖化に反対するFriday For Future(FFF)運動の神戸での取り組み」「第30回反核医師のつどいなど核廃絶を求めるこの間の運動」など、医療・社会保障改善、反核・平和、環境・公害に対する運動の強化を求める発言や、各支部での多彩な活動の紹介など、17人から発言があった。
 最後には、診療報酬・介護報酬を引き上げ、不合理是正を行うこと、医師不足解消のため医師数をOECD平均まで引き上げることなどを盛り込んだ決議を採択した。
第96回評議員会特別講演
現役高所得者より重い高齢者の租税負担率
唐鎌直義立命館大学特任教授が講演
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唐鎌氏が高齢者世帯の家計についての研究結果をもとに講演した

 特別講演では、立命館大学産業社会学部特任教授の唐鎌直義氏が、総務省の『家計調査年報』を用いて、高齢者世帯の家計についての研究結果などについて講演した。
 氏は年金の引き下げにより、高齢夫婦無職世帯の年収は277.9万円から255.4万円まで、1割程度減少したと説明。内訳として消費支出は、食料品や光熱水費が値上げにより増加、税金や社会保険料も負担増となった分を、交際費や住居費の削減、また貯蓄の切り崩しによりまかなっていることが浮き彫りになったと、研究結果を示した。
 続いて、高齢無職世帯と、現役勤労者世帯の租税負担率について解説。消費税、所得税などの直接税、社会保険料を合わせた負担率は、高齢夫婦無職世帯では21.31%と、年収約1400万円の階層の22.18%と変わらない高負担だと紹介した。さらに、消費税10%への増税後の試算では、それぞれ23.26%、22.91%と逆転すると解説し、「政府は、消費税は公平な税制であると主張するが、高所得者の負担を低所得者や高齢者に転嫁しているにすぎないことは明らかだ」と批判した。
 最後に、国民一人あたり社会支出の国際比較を示し、GDP比で見ると、日本はスウェーデンのほぼ半分、ドイツの75%程度だと解説。経済に見合った社会保障を実現させるために、法人税や所得税の税率を昔の水準に戻して、財源を確保する余地は十分にあると強調した。
 第42回共済制度委員会では、共済事業報告および事業計画案が報告され、特別報告では富国生命保険相互会社取締役専務執行役員の櫻井祐記氏が、「変容する金融市場と保険業界」をテーマに報告を行った。臨時決算総会では、18年度決算・監査報告が採択された。
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