兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年2月25日(1934号) ピックアップニュース

燭心

 その昔、揚子江中流域に「楚」という国があった。黄河流域の民とは文化を異にし、楚は気候温暖、長江と漢水の合流点で水運に恵まれた豊穣の地で、鉄の大産地でもある。洞庭湖の北にある湖北省は風光明媚で漢詩に登場することも多い。劉邦に追われた楚の項羽が孤立無援状況。四面楚歌の有名な故事がある▼豊かな江南は北方の武力によって収奪されてきた。赤壁の戦いも湖北省の史跡である。18世紀、白蓮教の乱は湖北省5万人の反乱、1851年洪秀全による太平天国の乱も湖北省で勢いづいた。清の曽国藩らにより武力鎮圧されたが、洪秀全の上帝会は、土地私有禁止、人間の平等、男女平等、経済的平等を主張して蜂起した。これは後の共産主義的思想と軌を一にし、高く評価される。その後1911年の辛亥革命(清朝滅亡)も湖北省武漢三鎮で始まった。政治の中心は武昌、商業は漢口、工業は漢陽、この三つを武漢市として統一し、省都となった▼中国の歴史で湖北省は経済、産業の中心だけでなく、歴史の変節は必ず武昌(武漢)で始まる。日本の長州と似て湖北省出身の政治家は多い。林彪りんぴょうは毛沢東の後継者であったが、亡命しようとして事故死。他にも李先念(第3代国家主席)、陳潭秋ちんたんしゅう董必武とうひつぶ黎元洪れいげんこう等々▼今回の新型コロナウイルスの大爆発は過去の全共闘の常套句「一点突破全面展開」か? 漢の劉邦に滅ぼされた「力拔山兮氣蓋世」の項羽と虞美人の2222年前の呪いか? 新たな中国の大変革の前兆か?(鼻)
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