兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年2月25日(1934号) ピックアップニュース

参加記 環境・公害対策部 アスベスト問題学習会
兵庫県・大阪府がワースト1・2 早急な対策・規制強化必要
副理事長  川西 敏雄

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地方議員にアスベスト対策の重要性を知らせた

 環境・公害対策部会は1月27日、協会会議室でアスベストに関する学習会・意見交換会を開催した。この企画は阪神・淡路大震災での大量のアスベスト飛散や、今後増加するアスベスト含有建物の解体工事などで被害者数の増加が確実視されることから、健康被害の防止、検診体制の確立、規制強化を求めるため県下自治体の議員らを対象に行ったもの。県議会議員2人、神戸市会議員6人など13人が参加し、意見交換した。川西敏雄副理事長の参加記を掲載する。

 アスベスト(石綿)は、WHOでグループ1に分類される発がん性物質で、1980年代に北欧、90年代欧米で使用が禁止されたにもかかわらず、日本では2006年まで全面使用禁止となりませんでした。規制が遅れたことで健康被害が広がり、年間の中皮腫死亡者数は1500人ほどで、特に兵庫県・大阪府がワースト1・2です。
 環境・公害対策部員の上田進久先生が「今なぜアスベスト問題か」をテーマに、阪神・淡路大震災でのアスベスト曝露の実態について講演しました。震災直後に実施された環境庁(当時)などによる調査資料に基づいて検証を行い、震災直後から広範囲に長期間、高濃度のアスベスト飛散があったと指摘されました。当時の測定値は白石綿濃度のみでしたが、建物解体現場周辺での民間団体による調査では毒性の高い青石綿や茶石綿も大量に検出されており、被災地は青石綿・茶石綿・白石綿が混じった「混合曝露」という状態で、実際の健康リスクは非常に高いと問題提起しました。
 中皮腫発症には20~50年もの潜伏期間があり、今後被害者の急増が見込まれるため、ハイリスクの人たちへの注意喚起や検診への受診勧告と共に、行政が中心となり真に「アスベスト検診」と呼べるような検査体制を確立させる必要があると強調しました。
 中皮腫・じん肺・アスベストセンターの永倉冬史事務局長は「アスベスト飛散防止の最前線」をテーマに、解体現場等で発生するアスベストのリスクについて講演し、適切な解体工事が行われないと容易に飛散し、健康被害を及ぼすとして、現行のアスベスト規制の問題点を指摘しました。先進的な事例として東京都・築地市場での建物解体に際し、行政が住民に対するアスベストリスクコミュニケーションを実施し、飛散防止に役立ったことを紹介いただきました。行政に立ち入り調査や完了検査などを行わせ、お金と時間をかけさせることで、有効なアスベスト対策が実施できた事例が紹介されました。
 以上のアスベストに関する問題は一般の国民には知られておらず、周知が求められるとともに、行政への働きかけも必要と感じました。参加した議員からも規制強化や検診体制確立に向けた問題点は何かといった質問が出され、建設的な議論ができたのではないかと思います。25年前、阪神・淡路大震災を経験したわれわれや、各地から支援に来てくれたボランティアの健康が脅かされており、他人事ではありません。早急に検診体制や補償制度の確立が必要だと強く感じました。

図 中皮腫死亡者数とアスベスト輸入量の日英比較
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