兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年3月05日(1935号) ピックアップニュース

新型コロナウイルス感染症に関して医療提供体制の充実を求めるとともに過度な人権制限に反対する

 新型コロナウイルス感染症の流行を受け、協会は2月22日の第1107回理事会で下記の声明を採択し、関係機関に送付した。以下に全文を掲載する。

関係各位
新型コロナウイルス感染症に関して医療提供体制の充実を求めるとともに過度な人権制限に反対する
2020年2月22日
兵庫県保険医協会
第1107回理事会
 現在、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症は感染拡大を続けており、2月19日の段階で、全世界で75,000人以上が感染し、中国を中心に2,000人以上が死亡している。
 我が国でも様々な対策が採られているが、国内で流行した場合には第二種感染症指定医療機関等の病床が不足するとして厚生労働省は、一般病床での入院も認めるとの通知を発出。また、医師が総合的に判断した結果、新型コロナウイルス感染症と疑う者についても行政検査を行うとする通知も発出された。
 これらにより、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の国内での流行時には、改めて一般の医療機関がその最前線に立つことが明確にされた。
 今回の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の教訓として引き合いに出される2009年に流行した新型インフルエンザ(H1N1)では、日本の死亡率は、人口10万人当たり0.16人とカナダの1.32人、イギリスの0.76人、フランスの0.51人、ドイツの0.31人と比較して極めて低かった。その理由は、医療アクセスの良さ、医療水準の高さ、抗インフルエンザウイルス薬の迅速な処方、国民の公衆衛生に対する意識の高さといわれている。
 これに照らせば、一般の医療機関においても高い医療水準を維持するために、医療関係者向けの研修会を開催するとともに、最新の医学的知見を随時提供することが求められる。また、迅速検査キットやワクチンの早期開発と早期保険収載、消毒用アルコールや次亜塩素酸ナトリウム、医療用マスクの十分な安定供給が求められる。それらに加え国民の公衆衛生に対する意識をさらに高めるために必要な情報の周知をさらに進める必要がある。国民に対する正しい情報の提供は国内におけるいわゆる「インフォデミック」を防ぐことにも資する。
 さらに、医療アクセスの良さを維持し向上させるため、中長期的課題としてそれを阻害する患者窓口負担増や大病院へのアクセス制限などの施策を見直すとともに、第二種感染症指定医療機関等の病床不足などの事態を今後引き起こさないために病床機能の更なる充実を求めたい。現在、進められている公立・公的病院の病床削減や病床稼働率の過度な引き上げなどはそれに逆行する政策であり是正すべきである。また、医療提供体制充実のために医療費の抜本的増額と医師を初めとする医療従事者の人員増が必要なことは言うまでもない。
 今回の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の感染拡大を受けて「憲法改正の大きな一つの実験台。緊急事態の一つの例」などとの声が一部の政治家から上がっているが、国民の不安に乗じて、国民の人権を制限する改憲議論を呼び起こすことは言語道断である。既に行われているチャーター機による武漢からの帰国者や感染者の乗るクルーズ船乗客のホテルや船内での隔離については、人権の制限を最小限に抑える配慮とともに、身体はもちろん精神的なケアも十分に行う必要がある。
 さらに、欧米でのアジア系の人々に対する差別などが問題視されているが、日本国内でも同様に中国人旅行客や感染者の治療に当たる医療従事者への差別が起こっている。これらを放置せずにしかるべき対応をとるともに、差別を助長しないよう適切な情報提供を行うべきである。
以上

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