兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年4月15日(1939号) ピックアップニュース

新型コロナ関連記事
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート 結果
地域の医療機関に防護具の供給を
兵庫県保険医協会 政策部

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、協会が会員に実施した緊急アンケートの結果を詳報する。

医科診療所マスク「全くない」3割
 衛生用品等の今後約1カ月の確保状況について聞いたところ、サージカルマスク・N95マスクについて「十分に確保している」と回答した病院、医科診療所、歯科診療所はそれぞれ1.4%、7.3%、15.0%だった。一方で在庫が「全くない」とする回答は24.0%、32.2%、16.6%だった(図1・2)。
 ゴーグル・フェイスシールドについては「十分に確保している」とした病院、医科診療所、歯科診療所はそれぞれ1.5%、3.2%、13.9%で、在庫が「全くない」とする回答は41.6%、64.2%、28.4%だった。
 防護服については「十分に確保している」としたのはそれぞれ2.8%、1.9%、6.7%で、在庫が「全くない」とする回答は42.3%、69.5%、53.4%だった(図3)。
 消毒用アルコールについては、「十分に確保している」と回答した病院、医科診療所、歯科診療所はそれぞれ2.8%、7.6%、17.8%だった。一方で在庫が「全くない」とする回答は22.6%、17.8%、14.3%だった(図4)。
 次亜塩素酸ナトリウム液については「十分に確保している」と回答したのはそれぞれ11.2%、9.4%、18.9%だった。一方で在庫が「全くない」とする回答は14.1%、30.6%、12.8%だった。
 その他不足しているものを聞いた自由記入欄では「次亜塩素酸ナトリウム液は市販のハイターで代用しています」「ベンザルコニウム塩化物液、イソプロパノール液の残がなく採血等の消毒が不足しそうになっている」「ペーパータオルが手に入らない」「非接触体温計が全く手に入らない」「滅菌ガーゼ、処置用手袋がないため処置ができない」「内視鏡用のガウンが全く手に入らない」「インシュリン使用中の患者のアルコール綿が全くない」「当院は透析クリニックで、日々大量のマスクと手袋が必要だが、在庫があまりない」「アルコールを入れるためのスプレー噴霧機も不足している」「オキシドールが手に入らない」など切実な声が寄せられた。
「コロナ感染者が出た」とのうわさも
 いわゆる風評被害について「ある」と回答した病院は5.6%、医科診療所は8.6%、歯科診療所は7.2%だった。「医療機関にかかると新型コロナウイルスに感染する」という一般的なものがほとんどだが、一部には「予防のため、ゴーグルとN95マスクを着用し、診療していたらコロナ感染者がでたらしいとうわさされていた」「新型コロナウイルス感染者がいる介護施設の利用者が当院に来院しているといううわさが立っている」「同じ町内から新型コロナウイルス感染者が出たとのうわさがあり、当院から発生したとうわさされている」「近所の住人にコロナが出たとうわさが流れ、その人が当院を受診したとのデマが流れ、一部の住人から自治会役員に『○○医院でコロナが出たので受診しないようにと連絡網に回してください』と電話が入ったと聞いた」「新型コロナウイルスに感染した看護師が当院で投薬を受けていると、ネット上で広がっていると問い合わせがあった」「地域で初の感染者がでたとき当院の前でTV取材しており、当院はコロナ発生していないのにまるで当院からでたような報道がされていたと患者さんから聞いた。その報道の影響で、コロナ発生が当院なのかという問い合わせが多数あり困った」「駐車場で問診していたらコロナが出たといわれた」など、多くの深刻な事例も寄せられた。
歯科でも5割弱で受診減
 昨年同時期と比較した患者の受診動向について、患者数が「減った」との回答した病院、医科診療所、歯科診療所はそれぞれ77.5%、79.3%、46.7%だった(図5)。
 減ったと回答した医療機関にその比率を聞いたところ、平均で病院、医科診療所、歯科診療所でそれぞれ20.3%、26.7%、20.3%だった。
 コメント欄には「3/27以降特に悪化。半日で10~15人程度しか来院がない」「高齢者と同居している家族が代理で来院。1~2カ月程度の長期投薬を希望されるケースが増えている。一時的な処置として応じているが、高齢者の健康管理上よくないと思っている」など声が寄せられた。
診療所からの検査依頼拒否目立つ
 患者からPCR検査を希望された医療機関は、病院で38.0%、内科・耳鼻咽喉科を標榜する医科診療所で34.8%だった。また、PCR検査を依頼した医療機関は病院で33.8%、内科・耳鼻咽喉科を標榜する医科診療所で17.1%だった(図6)。また、そのうち保健所等で受け入れられたのは病院で87.5%、内科・耳鼻咽喉科を標榜する医科診療所で31.7%だった(図7)。
 「保健所に問い合わせをしても、数日にわたり38~39度の熱があるのに近隣の診療所で診てもらうよう指示された人が複数おられた」「保健所の対応が非常に悪い。発熱・咳が続いていてもPCR検査に該当しないと断り、いきなり開業医に診てもらいなさいと非常識なことを言っているようだ。いきなり電話連絡もなく、受診するように誘導するのはやめていただきたい」などの声が寄せられている。
「動線分離不可能」の声も
 発熱患者の対応については、「原則的にお断りしている」と回答した医療機関の比率は病院で17.2%、医科診療所で23.3%、歯科診療所で50.0%だった(図8)。
 病院では46.9%が「別室診療」をしており、特別な発熱外来を設けているところは6.3%だった。内科・耳鼻咽喉科を標榜している医科診療所でも36.0%が「別室診療」をしており、インターホン越しや車中での対応など院外での対応を行っているところも26.4%あった(図9)。
 自由記入欄では「患者が保健所に電話しても、結局『開業医へ行って下さい』と言われ、普通に来院している」「小さなクリニックなので動線分離など不可能。診療時間を別に設けることもスタッフに時間外労働をさせることにもつながるので困難」「入口に『発熱などの方は入らずにまず連絡を』と貼っているが、それでも入ってくる発熱の患者さんがいます。待合室がパニックになるので、いったん外に出てもらい、診療時間外に来てもらうようにしています。その際、医師一人で対応。職員もこわがるので、院長がひとりで受付、診察、会計をします。そのあと、診察室の消毒。患者ひとりに対し、1時間ほどかかりますので、負担が大きいです」などの声が寄せられた。
 防護具の使用状況については病院、医科診療所、歯科診療所全てで90%以上が使用している(図10)。
一部で休校による勤務調整
 職員の勤務・出勤について、病院では7.0%が「勤務調整をした」と回答し、その他の93.0%は「これまでどおり」と回答している。医科診療所では7.9%が「勤務調整をした」、3.5%が「職員の出勤を減らした」と回答、1.6%が「診療制限をした」と回答した。歯科診療所では7.8%が「勤務調整をした」、3.9%が「職員の出勤を減らした」、0.6%が「診療制限をした」と回答している。
 コメント欄には「子どもを預ける施設がないので看護師等の配置が難しい」「感染リスクを避けるために、診療体制を変更した」などの声が寄せられた。
行政に医療機関への適切な対応求める
 全体を通しての自由意見として、「このような時に改定を予定通り行い届出の期日を延長もしない厚労省にはあきれる。税の確定申告でさえ1カ月延長されるのに」「この状況が3カ月以上続くと経営がかなり厳しくなる」「マスク、消毒用アルコール等、配布していただければ非常にありがたい」「保健所の対応が非常に悪い。発熱・咳が続いていてもPCR検査に該当しないと断り、いきなり開業医に診てもらいなさいと非常識なことを言っているようだ。いきなり電話連絡もなく、受診するように誘導するのはやめていただきたい」などの声が寄せられた。
 協会はこれらの意見を受け、患者向けに、発熱などの症状がある場合は、医療機関の指示に従って受診すること、医療関係者がマスクやゴーグル、防護服等を着用しての診療は、院内感染防止のための予防的な措置であること、インターネットや周囲の方の不確かな情報を鵜呑みにしないよう周知していく。
 また、行政や国に対しては地域の医療機関のために十分な個人用防護具や衛生用品等を確保、配布すること、医療機関向けに患者や職員等に感染者が出た場合の対応指針を示し、それに沿って休診等を行った場合の補償制度を創設すること等を求めていく。

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