兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2020年6月25日(1945号) ピックアップニュース

新型コロナ関連記事 第2回新型コロナ緊急アンケート
経営悪化の実態浮き彫り 4紙がアンケート結果報道

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受診抑制の厳しい現状についてマスコミに対し西山理事長が報告

 新型コロナウイルス感染症の影響で受診抑制や医療提供体制の縮小が起こっていることを受け、協会は3月末に続き、会員医療機関を対象に「第2回新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急アンケート」を5月25日~6月1日に実施。878医療機関より回答を得、医科・歯科ともに約9割もの医療機関で患者数減少・収支悪化という深刻な受診抑制の実態が明らかになった。6月17日にはマスコミ向けに結果を報告した。【アンケート結果詳細は次号掲載予定】

約9割で「患者減」健康への影響も
 アンケートは、医療機関における受診抑制の実態を明らかにし、今後の「第2波」の発生時に必要な医療提供体制を整備するよう国や県に具体的な対応を促すために実施した。
 患者数の減少についての質問では、病院の89.8%、医科診療所の87.3%、歯科診療所の93.8%で、昨年度と比べて患者数(レセプト件数)が減少したと回答があった。減少率は、医科診療所・病院で平均24.4%、歯科医療機関で29.2%と、歯科で医科よりも深刻な受診抑制が起こっていることが明らかとなった。
 また、受診抑制による疾患への影響については「血糖、血圧、脂質異常など慢性疾患のコントロール悪化」「認知機能、うつ症状、妄想、不眠、不安障害などの病状増悪」「前立腺がんの骨転移、有症状者の受診控えによる進行がん例の増加」「歯科治療の中断により抜歯になった」「カリエス(う蝕)が進行し、抜髄になってしまった」などの深刻な実態が寄せられた。
 医療機関への誹謗中傷や風評被害については、「当クリニックでコロナの患者が出たとのデマが流れていた」「いつの間にか院長と看護師が新型コロナウイルス感染症だと言われた」などが寄せられた。
歯科医療機関の75%「助成金手続きの迅速化を」
 収支悪化への政府の対策については、医科診療所・病院の57.6%、歯科診療所の75.3%が「助成金・給付金などの手続きの簡素化・迅速化」を挙げている。特別貸付や雇用調整助成金を利用・検討するとの回答が多いことと合わせ、第2波へ向けて経営状況改善への緊急的な対策強化が必要である。
マスコミへ報告会6紙が取材
 マスコミ向けの「第2回新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急アンケート結果報告会」では、西山裕康理事長が結果を報告。質疑応答では西山理事長、武村義人・加藤擁一・川西敏雄各副理事長が現場の実態も踏まえ、新聞記者の質問に答えた。マスコミは朝日新聞、毎日新聞、神戸新聞、時事通信社、しんぶん赤旗、兵庫民報が参加した。
 出席した武村副理事長は、「受診抑制による重症化の影響や超過死亡者数はまだ顕在化しておらず、これから出てくる可能性がある。必要な受診をためらわせないよう報道していただきたい」と、受診抑制の危険性とメディアの発信の重要性を訴えた。川西副理事長は、「保険医療機関への減収補てんをしないのは国の責任放棄だ。厳しい収支状況を改善するために、診療報酬の概算請求を認めるべきだ」と強調した。
 報告会の内容は、翌18日付で神戸新聞が「県内医療機関9割患者減 収支悪化、資産崩し対応も」、毎日新聞が「医療機関9割減収 『受診控え』響く」、しんぶん赤旗が「受診抑制で病状悪化、歯科の57.6%」、21日付で朝日新聞が「『4月患者数減』9割 医療機関アンケート」との見出しでそれぞれ報じた。また、19日付のNHKニュース番組でも調査結果が紹介された。

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各紙で写真や表付きで取り上げられた。(右上から時計まわりに)朝日新聞、毎日新聞、神戸新聞、しんぶん赤旗

県へ要請 医療機関の経営保障を
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元佐医務課長(右2人目)に西山理事長(右端)ら協会役員が要請書を手渡した

 6月11日、協会は兵庫県に対し、新型コロナウイルス感染症に伴う患者の受診抑制や感染防護具の不足について厳しい状況を伝えるとともに、県独自で必要な措置をとるように要請を行った。協会からは西山裕康理事長をはじめ武村義人副理事長、加藤擁一副理事長・歯科部会長が参加。県側は元佐龍医務課長が応対した。

 冒頭、西山理事長は「すべての医科・歯科医療機関および歯科技工所に対する給付金等の支援策を求めます」と題した井戸敏三兵庫県知事宛の要請書を手渡し、協会が実施した新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急アンケート第2回で明らかになった医療機関の減収の状況を訴え、「医療機関の経営難は県民の健康悪化に直結する」として、医療機関経営への保障を求めた。
 武村副理事長は「憲法25条に謳われた生存権を国民に保障するため、国は公民問わず保険医療機関に国民に対する医療提供を担わせている。そのため、医療機関の経営が危機に陥れば、国民の生存権保障に支障をきたすことになりかねない。数ある業種の一つではなく、公益性の高い業種として特別な対応を行うべきだ」と述べた。
 元佐課長は、県民の受診抑制改善へ、医療機関に対する感染対策支援を予算案に盛り込んだと説明。国が第2次補正予算で行うとしている医療従事者に対する慰労金の支給について、「県民の声を聞き、国のガイドラインに沿いながらより広い範囲での給付が重要と考えている」と述べた。
 また元佐課長から持続化給付金の医療機関での利用状況について質問があり、武村副理事長が「そもそも医療機関の利益率は極めて低い。持続化給付金支給の要件となっている売り上げの50%減少という水準になれば、医療機関は破たんする」と説明。加藤歯科部会長がアンケートをもとに「40%の歯科医療機関が利用を検討しているが、多くの医療機関から、ハードルが高すぎる、申請の方法が複雑すぎるとの声が上がっている。県として国に対し、申請の簡素化、要件緩和を訴えてほしい」と求めた。
 当日は協会が運営に協力する「保険でより良い歯科医療を」兵庫連絡会としても要請を実施。「連絡会」の世話人を務める加藤歯科部会長は、協会のアンケートでは85%以上の歯科医療機関が、委託技工物の発注が「減った」と回答しており、普段から厳しい経営を強いられている歯科技工所が破たんする可能性があると訴え、医療機関同様に歯科技工所にも支援を行うべきだと訴えた。元佐課長は「歯科医療はこの間、非常に注目されている。フレイルなど口腔内の健康が全身の健康に密接に関わっていることが明らかにされているので、よく検討したい」と述べた。

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