兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2020年9月15日(1952号) ピックアップニュース

燭心

 日本酒用の酒米である山田錦は20年ほど前に五百万石などの他の酒造用のブランドを抜き、生産量日本一となった。兵庫県はその6割を生産する、全国を代表する産地である。そして県下の生産の8割を占めるのが三木市である。昼夜の寒暖差が大きい内陸性気候が、生産に適しているそうだ▼その三木市南西部の印南野台地では、かつて水資源に乏しく、畑作中心であったが、明治期に稲作への転換のため淡河川疎水が計画され、1888年に着工、1891年に完成した。富国強兵政策の一環として、内務省技師やお雇い外国人の設計の下で建設され、途中にはサイフォンの原理を利用して向かいの山に水を運ぶ「御坂サイフォン橋」など、当時としては最先端の技術がつまっている。米を自給するため、あくなき努力を100年前に展開された当時の方には頭が下がる▼しかし今や食料自給率は40%を割ったばかりか、安倍政権時の日米FTA締結によりさらなる低下も見込まれる。この状況を見て当時の官僚や建設者たちは何を思うだろうか。コロナ禍の今こそ食料自給のことを改めて安全保障の一環として再認識し、今一度食の安全と確保を先人に倣うべきであろう。政局では自民党総裁選が世をにぎわせたが、わが国の富を米国に売り渡す政治だけはご勘弁願いたい▼政府に軽視されているのは医療も同じである。「この程度の国民にはこの程度の政治」と言われないよう声を上げていきたい。まっとうな政治家を選ぼう、いや育てよう(蓮)
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方