兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2021年4月15日(1971号) ピックアップニュース

燭心

 権力とは他人を服従させる力である。国家にせよ、個人にせよ、一度握った権力を自ら進んで捨てる者はほとんどいない。しかし絶対権力は、絶対に腐敗する。独裁は、一見効率は良いが、国民の主体的で多様な能力を引き出せなくなり、長期的には国家の弱体化が起こる▼政治権力は、一元的な王権神授説でなく分散するほうが鼎の三脚のごとく、社会の安定につながる。古代王政ローマのロムルス王は、王、元老院、市民から成る三権分立を打ち出し、互いにけん制しあって権力の一極集中を防いだ。しくも同じ頃、東洋では周の思想家・関尹子かんいんしが、著書『関尹子』の「三極」篇の中で、ヘビ、ナメクジ、カエルの三者が互いにけん制しあって身動きが取れなくなる三竦さんすくみを説いた▼西洋では後に、LockeやMontesquieuにより王権神授説が否定され、権力の乱用を防止し、政治的自由を保障するために国家権力を立法と司法、行政の三権に分け、それぞれ独立した機関に委ねるとして、近代憲法に強い影響を与えた▼しかし現在の日本では、安倍・菅自民党長期政権のため、おごる行政府が人事権を官僚に行使したり、司法やマスコミ、放送局のみならず、学術会議の社会科学者にまで圧力をかけている。Montesquieuから250年も経った今日、社会は複雑化、情報化しており、三権+マスメディアの四権に分立させるべきである。凹凸のある地面では三脚の鼎が安定するが、平坦な土地では、机のごとき四脚が安定するのである(鼻)
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方