兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年5月15日(1973号) ピックアップニュース

新規個別指導で近畿厚生局が不当な裁量権行使
協会の度重なる要請で改善を実現

 新規個別指導をめぐる近畿厚生局の対応の問題点が浮き彫りになった。
 2020年12月新規個別指導予定の複数の医療機関に対し、近畿厚生局が指導日直前に、理由も明示せずに「延期」の通知を行ったことが発端。3月になり、近畿厚生局は突然「4月に再開する」との連絡を当該医療機関に入れたが、対象の患者を「指定しなおす」とともに、通常1年とされている帳票類の持参物も「延期した期間も含める」との方針を示した。会員医療機関からは、「一方的な内容で納得できない」「休診や予約調整など大きな負担」「理由も言わないのは理不尽」などとの相談が、断続的に協会に寄せられた。
 そもそも当該医療機関は、12月に新規個別指導を受ける予定で、指導日とカルテの指定も受け、帳票等の準備も行っていた。近畿厚生局側の一方的な都合でそれを変更するのであれば、少なくとも指導を受ける医療機関の側に、新たな負担が発生しない方法を提示すべきである。
 協会はこうした事態を受け、1月と3月にそれぞれ近畿厚生局に対して「被指導医療機関の負担にならないように、準備済みの書類等で、教育的で懇切丁寧な指導を行うよう」申し入れを行った。3月の申し入れの際、近畿厚生局・山内聡指導課長は「指導は当然懇切丁寧に行うが、指導大綱に基づいた通知でまちがっていない」「要請書は受け取るが、私がここで回答することではない」などと、医療機関側の立場を理解しようとしない姿勢に終始した。
 その後、3月19日に近畿厚生局が発出した通知で、指定カルテについて、医科は「12月に指定したものと同じ患者」、歯科は「1週間前に再度連絡」と、医科歯科で異なる対応を行っていたことが判明。新たな不合理な対応が判明した。
 協会は、こうした近畿厚生局の姿勢を改めて問題視。田村智子参議院議員を通じて、厚生労働省(本省)の見解を質した。主な内容は、(1)近畿厚生局側の一方的な都合による日程変更の負担を、医療機関側にのみ押し付ける姿勢は、社会通念上妥当性を欠いているのではないか、(2)医科歯科で別の対応をしていることに、どのような合理的根拠があるのか、(3)医療機関側の要請に耳を傾けない担当官の姿勢を、行政機関職員の資質としてどのように考えるのか、の3点。
 厚労省は、調査した結果「このたびの近畿厚生局兵庫事務所における医科歯科の対応の違いは問題であると厚労省としても認識している」と表明。持参物の期間延長は問題であるとの協会の指摘について「内部で共有する」との認識を示した。
 厚生労働省の指導を受け近畿厚生局も対応を変更。(1)歯科についても医科と同様に12月に指定した患者、(2)持参物も当初予定した期間・場合によっては期間短縮、と日程変更による新たな医療機関側の負担がなくなるなど改善がなされた。
 協会は、今後も会員医療機関の声を受け止め、近畿厚生局の不当な裁量権の行使に対しては断固とした姿勢を取り、指導を改善させていく。
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