兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2021年5月25日(1974号) ピックアップニュース

政策研究会 「人新世の『資本論』」で話題の齋藤幸平氏が講演
収奪をなくす社会へ転換を

1974_03_1.jpg 1974_04.jpg

齋藤幸平准教授(上写真)が脱成長コミュニズムをオンラインで解説し、86人が参加・視聴した(下)

 コロナ禍や気候変動等の危機の先にあるべき社会とは--。協会は5月16日、緊急事態宣言により中止となった第98回評議員会での特別講演に代わりオンライン政策研究会「ポストコロナ社会をどうつくるか ~人新世の『資本論』~」を開催。大阪市立大学大学院経済学研究科准教授の齋藤幸平氏がオンラインで講演し、会場で参加した協会役員とオンライン参加者をあわせて86人が参加した。

 齋藤氏は、これまでの生活を一変させた現在のコロナ禍について、人類による自然破壊が、新種のウイルスとの接触の一因になったと、資本主義のもとでの乱開発の危険性を指摘した。一方で、今後ワクチン接種等により、コロナ禍が収束した後に経済活動がV字回復するなどで、これまで通りの生活に逆戻りしてしまうと、過去に経験したような経済・金融危機の再来や大量生産・大量消費経済によるCO2大量排出での気候変動の危機もいっそう高まると警鐘を鳴らした。
SDGsは「大衆のアヘン」
 こうした危機に対して、政府や企業は、SDGs(持続可能な開発目標)やESG投資を政策に組み込み、環境問題に対する責任を果たしているように見せかけているが、すでに地球温暖化による気候変動は、地球規模でCO2排出ゼロを実現しなければ取り返しのつかない状況にまで追い込まれていると指摘。消費者で対応可能なリサイクルやリユースなどの「一人ひとりの小さなアクション」では気候危機からは逃れられないと解説し、SDGsは環境問題の本質を国民から遠ざける「大衆のアヘン」であると批判した。
 新技術開発によってCO2排出を削減すべきという意見についても同様に、これまでの資本主義のもとでの技術革新は、企業のさらなる大量生産を可能とし、かえって商品の消費量、CO2排出量は増加すると解説。さらに、新技術に必要なレアアースなどの金属の産地が、一部の発展途上国に限られているため、先進国がそれらの国で乱開発を進めるという、国家間での新たな収奪構造も生まれているとした。
暮らしを豊かにする脱成長社会
 一方で大量のCO2を排出する先進国の国民が豊かになっているかというと、多数は企業による長時間労働を迫られ余暇が乏しいという、「働くために生きる」とも言える状況に陥り、かえって不幸になっている面もあると指摘。欧米の20~30歳代の若い世代からは、こうした資本主義社会のシステムからの転換を求める声が上がっており、アメリカ民主党の予備選挙やイギリス総選挙では、格差をなくし公正な分配を主張する候補者が若年層から多数の得票を集めたとの結果を紹介。経済成長のための長時間労働を強いるのではなく、趣味や友人、家族との時間を重視した、より平等・自由・公正な社会システムへの転換を求める声が高まっており、これこそが「脱成長によるコミュニズム」と呼べるポストコロナ社会のあり方だと訴えた。
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方