兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年10月15日(1987号) ピックアップニュース

燭心

 毎日の通勤中、市バスで〝?〟と感じたことがある。バス後部には一段の段差があり、足元には注意を喚起するライトが点滅する。その真上に見上げたところの天井部には「段差に注意」とあるが、どういう意図でここに書いてあるのか理解に苦しむ▼視線に関しては週刊誌の中吊り広告が終了、姿を消すことになったという。理由はさまざまとされるが、電車に乗ればその理由はすぐ理解できる。多くの乗客はスマホに目を落とし、外の景色すら見ている人も少なく、ましてや上向きに顔を上げている人はほとんどいない。加えて多くの方がイヤホンで耳を塞いでいる。さらにコロナ禍のもと、大きなマスク姿で会話もなしという一種異様な光景だ▼視覚、聴覚、表情を奪われた状態。情報は確かに多く得ているのだろうが、明言はできない何か重要なものを失っているのではと不安になる▼最近はオンラインの集まりが多くなってきた。現地に赴く手間が省けるという利便性があるが、詰め込みが多く、より多忙になった感すらある。学習会など事実や情報などの伝達に関してはいいが、議論し、アイデアを出し合い物事を進めていく会議に関してはいささか問題を感じる▼言葉だけではない肌感と言うか、参加者の意気込みが欠如するのだ。画面の中に多くのコマがあり参加者が映るが、表情は見えない。休憩時間や終了後の交流もない。元京大総長の山極氏は「人間が人間たるには〝三密〟が不可欠だ」と。失うものがなければいいが。(無)

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