兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年10月15日(1987号) ピックアップニュース

2021年衆議院選挙にあたって 開業保険医の重点要求(案)
2021年10月 兵庫県保険医協会

 協会は、10月19日公示、10月31日投票予定の衆議院選挙に向けて、「2021年衆議院選挙にあたっての開業保険医の重点要求(案)」を10月10日の理事会で承認した。要求(案)の全文を掲載する。

 今次衆議院選挙にあたり、私たち保険医は新型コロナウイルス感染症の蔓延で露呈した日本の医療提供体制の脆弱性を抜本的に克服するため、これまでの医療費抑制政策を転換することを強く求める。
 新型コロナ禍で医療崩壊とも言われる状況が生み出されたのは、この間の医療費抑制政策の下で行われてきた保健所の統廃合に象徴される公衆衛生行政の切り捨て、公立・公的病院の統廃合と病床削減、医師をはじめとする医療従事者の養成数抑制、医療機関経営を不安定化させる度重なる診療報酬のマイナス改定によるものである。
 にもかかわらず、この間の安倍・菅自公政権は新型コロナ禍の下でも、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担の2割化や病院の統廃合推進のための消費税財源投入、介護保険における補足給付の給付要件厳格化などさらなる医療費抑制政策を進めている。
 また、感染の恐れや経済的困窮を理由とする患者・国民の受診抑制による医業収入の減少や感染対策等医業費用の増加で苦しむ医療機関への補償は怠ったままである。そればかりか発熱外来を対象とした補助金はすでに打ち切られ、感染対策の充実のための診療報酬への加算も9月末で打ち切られた。
 医療機関は憲法25条に定められた国による国民の生存権保障の一翼を具体的に担う公益性の高い事業体であり、その経営を守ることは地域住民の命と健康を守ることであり、国の責任である。
 政府には、直ちに医療費抑制政策を改め、全ての医療機関への減収補填、2020年度診療報酬改定での抜本的なプラス改定、患者・利用者負担増の中止を求めるとともに、負担の軽減・廃止を求める。
 私たちは医師、歯科医師として新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症から国民の命と健康を守るために、医療・社会保障制度を抜本的に充実させることを求める。富裕層や大企業のみが恩恵を受ける経済政策ではなく、富裕層や大企業の応分の負担で税・保険料の累進性を高め医療・社会保障制度を充実させて、所得再分配機能を強化することにより、貧困と格差を縮小する政策への転換を求める。
個別要求
1、新型コロナウイルス感染症対策を充実させること
(1)新型コロナウイルス感染症患者に対して、重症度等に応じて最適な療養環境を十分に提供できるよう国のイニシアティブで各医療機関等療養施設の機能分化を行うとともに、それにあわせて公立・公的医療機関の人的資源を柔軟に配置すること。
(2)通常の医療提供に支障をきたさないよう新型コロナウイルス感染症患者を受け入れていない民間医療機関も含めて、受診抑制等による減収を補填すること。
(3)医療機関等の感染防止に係る経費について十分な保障を行うこと。
(4)医療従事者や介護従事者をはじめとして、希望者が定期的に公費によりPCR検査を受けられる環境を整備すること。
(5)業種・業態・規模に合わせて営業時間の短縮や休業に対する補償をきめ細かく実施し、緊急事態宣言やまん延防止措置等の実効性を上げること。
(6)新型コロナ禍を理由とした解雇や雇い止めに対して所得補償を行うこと。
2、今後の新興感染症対策を含めた医療・社会保障制度の改善要求
(1)地域の医療・介護ニーズを無視した病床削減は行わず、ニーズにあった医療・介護提供体制を整備すること。地域医療の砦として政策医療を提供する公立病院の役割を評価し、無理な統廃合を行わないこと。
(2)医師不足を解消するとともに相次ぐ医師の過労死を防ぐため、医師、看護師などの養成数を増やすこと。
(3)2022年10月からの75歳以上の窓口負担2割化実施を中止すること。患者負担増計画を撤回し、医療費窓口負担割合を引き下げ、無料をめざすこと。特にこどもの医療費窓口負担は国の責任で中学3年生まで無料にし、高校3年生世代まで無料をめざすこと。
(4)診療報酬本体部分を10%以上引き上げること。
(5)歯科医療危機の打開にふさわしい歯科診療報酬の大幅引き上げ、保険範囲の拡充、歯科技工士の労働環境の改善、金パラ逆ザヤ解消を行うこと。
(6)混合診療の全面解禁や株式会社による医療機関運営など医療分野での規制緩和を行わないこと。
(7)強引な国保の都道府県単位化を止め、国庫負担の引き上げで国保保険料を引き下げること。また、短期保険証や資格証明書の発行をやめること。学資保険などの差し押さえを行わないこと。
(8)介護保険制度を抜本的に見直すこと。a.介護報酬を引き上げること。b.必要なサービスが受けられるよう認定方式を改めること。c.保険料を応能負担に改めること。d.利用者負担を引き下げること。
(9)年金積立金の投機的運用を止めるとともに、自動的に年金支給額を減らす「マクロ経済スライド」を廃止し、最低保障年金制度の創設をめざすこと。
(10)医療の公益性を守る事業税非課税措置と4段階税制を存続させること。
3、災害復興を求める要求
(1)東日本大震災ならびに熊本地震被災者の医療費一部負担金免除措置を、生活再建が完了するまで再実施すること。
(2)被災地復興に直接関係のない事業に復興予算を流用するのをやめ、被災者の生活再建に真に役立つ予算執行を行うこと。
(3)災害援護資金の貸付要件を東日本大震災被災者なみにするとともに、返済免除要件をさらに緩和すること。
(4)東日本大震災被災者の災害公営住宅家賃の減免を拡大すること。阪神・淡路大震災被災者の借り上げ公営住宅からの「追い出し」をやめ、借り上げ公営住宅に入居した高齢被災者等が借り上げ期限により転居する際には、医療アクセスや地域コミュニティーの絆がQOLに直結することから、入居者の希望に沿った人道上の配慮をし、転居先をあっせんすること。
4、財政構造の転換を求める要求
(1)消費税を減税し、医療機関の控除対象外消費税をゼロ税率導入により解決すること。
(2)無駄な大型公共事業や不必要な防衛予算など、税金の使い方を見直し、社会保障への公費負担を拡充すること。
(3)空前の利益を上げ、内部留保を積み増ししている大企業に、安定的雇用の拡大、賃金の引き上げを求め、社会保険料収入を確保すること。
(4)大企業や富裕層向けの優遇税制をあらため、法人税や所得税率を引き上げ、社会保障の財源を確保すること。タックスヘイブンなどにより税金逃れを行っている企業や富裕層に追徴的に課税すること。
5、環境・公害に関わる要求
(1)稼働中の原発を停止し、すべての原発の再稼働、新増設、輸出を止め、全原発の廃炉を決断すること。
(2)原子力規制委員会を透明かつ公正・民主的な機関として確立すること。
(3)脱原発・脱石炭・再生可能エネルギー中心の政策に転換すること。
(4)アスベスト健康被害に関する国の責任を認め、被害実態の正確な調査・把握、十分な補償を行うこと。
(5)震災時をはじめとする建物解体に伴うアスベスト飛散を防止するため、実効性のある予防策を行うこと。
6、反核・平和と国民主権を強化・充実する要求
(1)安全保障関連法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を取り消すこと。
(2)憲法を守り、憲法どおりの国づくりをめざすこと。
(3)沖縄・普天間基地を無条件撤去し、辺野古への新基地建設を行わないこと。
(4)唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准するとともに、条約に参加をしない核保有国などに批准を求めること。

以上

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