兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年11月25日(1991号) ピックアップニュース

主張 新政権へ求めること
新自由主義からの転換なくして国民生活の向上なし

 今回の総選挙では、自民党が議席を減らしつつも、与党で293議席と、絶対安定多数を確保した。一方野党は、立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の4党が「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」と共通政策で合意し、217の選挙区で候補者を一本化したものの、公示前議席を下回った。日本維新の会は41議席へと躍進し、国民民主党も10議席に達した。これまでの従来型の選挙活動に加え、TVを中心としたメディアへの露出やSNSでの発信が、国民の支持と得票数に大きく関係しただろう。
 さて岸田新首相は、当初「新自由主義からの転換」「新しい資本主義」「成長と分配」などを掲げ、少なからず変革を期待させたが、具体的な政策を見るにつれ嘆息する。新自由主義は「自己責任、小さな政府、均衡財政、福祉・公共サービスの縮小、公営事業の民営化、規制緩和による競争促進、労働者保護廃止」などを基本とし、中曽根内閣に始まり、橋本内閣が引き継ぎ、小泉内閣が積極的に進め、安倍内閣でも継続された自民党の中心的政策であるため、岸田政権が転換するのは容易ではない。その証拠に、「新しい資本主義会議」の人選を見ても、財界人を中心としており、経済界の意向が色濃く反映されることは間違いなく、結局のところ、これまでの新自由主義政策の微修正に過ぎない。「分配」についても、看護、介護、保育分野の労働者の収入を増やすため、公的価格の見直しを行うとしているが、すでに財務省は「公的部門」の医療従事者およそ500万人の「公的価格」である診療報酬のマイナス改定を主張しており、これまで通り「パイの切り分け論」に矮小化しそうだ。そもそも新自由主義とは競争志向を正統化するための市場原理主義からなるグローバル化を前提とした経済政策であり、福祉・公共サービスたる公的医療を担う私たちとは相いれ難い。
 新自由主義は、「貧困と格差」の拡大をもたらしたが、今回の選挙では投票率も過去3番目に低く、国民から広く「信認」を得たとは言い難い。岸田首相は「人の話をよく聞き」、公明党が主張した「未来応援給付金」を計画しているが、一度限りの10万円相当の給付のみではコロナ禍で困窮している国民を救うことなど到底できない。岸田首相が言う「分厚い中間層」を再構築するには、新自由主義を抜本的に転換し、労働者の平均賃金を引き上げるとともに、税の再分配機能を強化して社会的弱者に対する給付を拡充するしかない。
 協会は今回の総選挙にあたって「開業保険医の要求案」を発表し、各政党・候補者と懇談を行ってきた。協会は不偏不党を原則とし、これまで通り民主的議論と手続きを経て練り上げた、具体的な「要求案」の実現に向け、署名運動や幅広い国会各政党・議員への働きかけを強めていく。
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