兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2021年12月05日(1992号) ピックアップニュース

燭心

 コロナ禍の今日、少なくない新興発展途上国が、民主主義的国家運営から、専制独裁国家へと舵を切り始めている。国民の自由を優先するより、中華人民共和国の手法がコロナ対策で優位との判断だろう。また、発展途上段階の国家では、開発独裁的政治体制を執る方が、短期的には効果があるのは明らかである▼先進国はおしなべて民主主義国家が占めているが、国民が豊かになれば、民主化や自由化が進むとは限らない。権力者は一度手にした特権を容易に手放さず、絶対的国家権力は絶対腐敗するからである。歴史の多くの事例もそれを示している。自由で民主的な国家とは人類の永い国家権力との苦闘で得られた、先人たちの残した遺産、至宝であり、その根幹は憲法である▼しかしコロナ禍の今日、独裁専制国家はAIで国民を監視することすら可能となり、政治決断も早くなる。これは中国を見ればよく分かる。中華人民共和国が共和国を名乗っているのは、周の れい 王が都から逃げ出した時、宰相のが政治を代行したという故事による。単に君主がいないという意味であり、決して民主的という意味ではない▼中国の一帯一路政策に同調して、開発独裁型新興国が増えてくるだろう。しかし民主主義は、選挙により国民に政治参加の機会を保障し、政治への当事者意識を高め、権力者への過度の依存を抑えるので、長期的には優れている。多様性を許容し、試行錯誤や時間はかかるが自己修正能力もある。賢者は歴史に学ぶべし(鼻)

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