兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年1月25日(1995号) ピックアップニュース

コロナ禍だからこそ国民医療を支える診療報酬の大幅引き上げと患者窓口負担引き下げを
−診療報酬マイナス改定に断固抗議する−

 政府が診療報酬の改定率を決定したことを受け、協会は1月8日に抗議声明を発表した。全文を掲載する。

抗議声明

2022年1月8日
兵庫県保険医協会
第1145回理事会

コロナ禍だからこそ国民医療を支える診療報酬の大幅引き上げと患者窓口負担引き下げを
−診療報酬マイナス改定に断固抗議する−

 厚生労働省は昨年12月22日、2022年度の診療報酬改定について、本体プラス0.43%、薬価マイナス1.35%、材料価格マイナス0.02%、全体でマイナス0.94%とすることを決めた。社会保障費の抑制路線のもと、安倍政権以降、5回連続のマイナス改定となる。
 診療報酬は、医療機関を経済的に支えて地域医療提供体制の持続可能性を高めるための原資であり、国民が公的医療保険で受けられる医療の質と範囲、量を規定するものである。
 今回の改定では、本体改定率がコロナ禍以前の2020年度の改定率プラス0.55%よりも低い上、すでに実施された感染防止対策に係る外来特例廃止やPCR検査等の評価引き下げに加え、小児の感染防止対策に係る特例(医科)の廃止が盛り込まれた。これでは、コロナ禍で困難を極める医療機関の経営回復は困難であり、地域における医療提供体制をさらに脆弱にする。
 今回の改定では「リフィル処方箋」の導入が盛り込まれたが、これは、慢性疾患患者から定期的な受診機会を奪うもので、医師が症状の変化に適した処方をできなくなる恐れがある。政府は今年10月から後期高齢者の医療費窓口負担を引き上げるとしており、経済的事情から一層の受診抑制が起こることは明白である。すでにコロナ禍とそれに伴う貧困や格差の拡大による受診控えが生じている中でのこれらの政策は、患者・国民の必要な受診を一層抑制し、心身状態の悪化や疾病の重症化をもたらし、命と健康を脅かすもので、医師・歯科医師として到底認めることはできない。
 今次改定では、薬価・材料の引き下げ財源の診療報酬本体への振替が行われなかった。2014年から5回連続である。しかし、この振替措置は、1972年の中医協建議以来、厚生(労働)大臣や首相が公式に合意し、医療制度の改善のために尊重してきたものである。高薬価が社会的な問題になっている中、この財源こそ活用し、診療報酬本体に振り向けるべきである。
 今回の診療報酬マイナス改定は、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」が聞き心地のいい政治的スローガンに過ぎず、岸田自公政権の内実は医療費をはじめとする社会保障費を抑制し国民生活に困窮をもたらす一方で、防衛予算をはじめ日米大企業へは莫大な利益供与を続ける安倍・菅自公政権の延長でしかないことを明らかにした。
 新型コロナ禍にあって、世界中で効率至上主義や市場原理主義の弊害が指摘されている。今こそ、新型コロナ禍にあっても利益を溜め込む大企業や資産をさらに増やす富裕層に応分の負担を求めて財源を確保し、医療をはじめとする社会的共通資本を国の責任で支え、国民生活を豊かにする政治への転換を行うべきである。
 診療報酬を大幅に引き上げ、公益医療を提供する医療機関の運営を安定させることこそ、いま求められているコロナ対策であり、国民が安心して医療を受けられることにつながる確かな道である。私たちはマイナス改定に抗議し、診療報酬大幅引き上げと患者窓口負担の引き下げを求める。
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