兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2022年2月25日(1998号) ピックアップニュース

神戸市営住宅の解体
アスベスト調査の不一致解明求め緊急要請

 協会環境・公害対策部は、神戸市営住宅・下山手4号棟(中央区)の解体工事におけるアスベスト調査・飛散防止に取り組んでいる。2月3日には、神戸市長に対し、森岡芳雄部長が、武村義人・生田診療所所長、上田進久ストップ・ザ・アスベスト西宮代表と連名で緊急要請を行った。本解体工事をめぐっては、2年前に協会の指摘により、危険な吹き付けアスベストの調査もれが明らかとなり、工事が延期されていた。要請の要旨を掲載する。

 私たちは医師として、県民の命・健康を守るため、中央区・市営住宅下山手4号棟解体工事において市民のアスベスト曝露が起こらないように要請を重ねてきた。
 1月31日、住宅建設課より下山手4号棟の解体工事の着工を行うと連絡があった。
 当該住宅の解体工事は、2020年10月に、当会の指摘により、吹き付けアスベストの調査漏れが明らかになり、当初の業者との契約解除、再入札に至った。
 当該住宅のアスベスト調査は、再入札までに3機関により行われているが、この3機関によるアスベストの調査・分析結果に相当数の不一致が認められる。
 「不一致の原因は解明に至っていない」なか、「不一致の場合、すべて含有とみなす」とした結果、施工面積は6・6倍に拡大し、工事費は入札時よりも5億円も増え約3倍に膨らんだ。私たちが情報公開請求で入手した調査資料によれば、特に、壁塗り材で、民間業者が「アスベスト含有」としたものが、公的機関であるひょうご環境創造協会の調査では「非含有」となっている箇所が非常に多く認められる。
 調査結果が不一致ならば、すべて含有とみなすというのは、市民の安全のためには非常に重要だ。しかし、今回のことから現時点で分かるのは、調査機関によって調査結果が大きく異なり、調査に信頼性がないということだ。これは、本住宅に限らず、これまでのすべての解体工事の調査の信頼性を根幹から揺るがす大問題だと考える。この原因を検証しなければ、今後アスベスト含有建物の解体を、安全、公正に進めることはできない。調査の差により工事費用が数倍変わっても原因が分からなければ、仮に業者による水増し請求が行われたとしても、市が確認する術がないということになる。貴市には調査資格を有する専門家はおらず、この間の対応から貴市のなかでの検証を信頼することはできない。専門家や市民らによる第三者による検証委員会を設けて、すみやかに検証を行うことが、最低限必要と考える。もし今回の件についての検証がなされず、説明が十分果たされないまま工事を強行すれば、今後の貴市の解体工事でも住民との間でトラブルとなり混乱をきたすことは必至であり、アスベスト曝露により市民の健康が損なわれると考える。
 解体工事が着工されようとしている今、私たちは、市民の命と健康を守るために、緊急に以下のことを訴える。

・市営住宅下山手4号棟におけるアスベスト調査結果の不一致の原因を解明するため、専門家や市民らによる検証委員会を設けて、速やかに事態の検証を行うこと
・不一致の原因が解明されないまま、当該建物の解体には一切着手しないこと
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方