兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年2月25日(1998号) ピックアップニュース

第7回 新型コロナウイルス感染症アンケート
地域の医療機関が保健所の肩代わり
保健所統廃合の弊害浮き彫り

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西山理事長(奥左)の結果報告をテレビ局などが取材

 「検査キットが足りない」「子どもの学級閉鎖でスタッフが出勤できず人手が足りない」-。オミクロン株による新型コロナウイルス感染症の急拡大で病床が逼迫し、保健所の業務も限界に達しつつある中、そのしわ寄せが地域の医療機関に及んでいる。協会では、実態を把握するため「新型コロナウイルスの感染拡大に対する第7回アンケート調査」を実施。会員医療機関の16.5%から回答を得た。2月16日に西山裕康理事長が、アンケート結果について、マスコミ向けに報告した。

 新型コロナウイルス感染症に関連して今年に入って休業した従業員がいた医療機関は医科で42.6%、歯科で41.0%だった。そのうち、「診療への影響があった」との回答は医科で60.7%、歯科で76.3%であった。「外来業務が回せない」「検査技師が陽性となり、エコー検査を中止した」「併設の通所リハビリ施設を3日間閉鎖」「新規患者受け入れをストップした」など切実な声が寄せられた。通常の医療提供に支障が出ており、患者さんの健康悪化につながりかねない。
 検査キット不足も深刻で、抗原定性検査キットの在庫状況では「10~19回分」との回答が最も多く28.2%だった。この在庫数は、アンケートに寄せられた患者数から2~3日分であると推測される。「全くない」との回答も10.9%に及んだ。実際に「抗原キットがなくなり発熱外来を休止した」との声も寄せられた。自院で濃厚接触者が出た場合に備えた検査キットについても、歯科医療機関の60.4%が「確保できていない」としており、「濃厚接触者となったスタッフの復帰のめどが立たない」など診療体制に影響が出ていることが明らかになった。
 一方、多くの医療機関が新型コロナ疑い患者を積極的に診ている実態も明らかになった。全ての医科医療機関のうち、新型コロナ疑い患者を診療している医療機関は62.6%に上り(図)、内科医療機関の46.6%が経過観察や治療を、18.3%の医療機関が往診を行っていると回答。そうした医療機関からは「毎朝、電話やメールで病状を把握」「必要に応じてHOT(在宅酸素療法)を導入」「重症化リスクの高い患者へラゲブリオを投与」「個室隔離で血液透析を実施」などの回答があり、地域の診療所が保健所や専門病院機能の一部を担っていることが明らかになった。
 自由記入欄には「施設入所の高齢者が重症化し救急車を要請したが対応してもらえずに見捨てられている印象」「デルタ株に比べ重症化する感覚はない。2類相当のままで良いのか」「検査等に時間、人手、経費がかかるわりに診療報酬が不十分」など政府の対策の不十分さを指摘する声も多数寄せられた。
 協会はアンケートから浮かび上がった実態の改善に向けて、行政等への働きかけを引き続き行っていく。

図 全医科医療機関のうち6割超がコロナ疑い患者を診療
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