兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年3月05日(1999号) ピックアップニュース

新型コロナウイルスの感染拡大に対する第7回アンケート調査・詳報
コロナ診療に見合う補償を

 オミクロン株による新型コロナウイルス感染症の感染急拡大で、県内の入院病床や宿泊療養施設が逼迫し、保健所の対応も限界を迎えている。こうした状況のもと、協会は、県内の医療機関の実態を把握し、必要な対応を行政に反映させるため新型コロナウイルスの感染拡大に対する第7回アンケート調査を実施した。結果の詳報を掲載する。

医科診療所の6割超コロナ対応
 全医科医療機関のうち、COVID-19疑い患者を診療している医療機関は62.6%であった(図1)。発熱等診療・検査医療機関が全医科医療機関のうち44.7%であることから、全体の約18%の医療機関が、発熱等診療・検査医療機関の申請を行っていないものの、COVID-19疑い患者を診療していることが分かった。急速な感染拡大により、発熱等診療・検査医療機関でなくても、対応せざるを得ない医療機関が増えていると思われる。
多忙を極める医療機関
 COVID-19疑い患者を診療している医療機関では1日平均9.3人の有症状者を診療していると回答した。
 COVID-19疑い患者の多くは初診患者であり、電話による来院の指示や本人・濃厚接触者の療養方法等の説明、その後の保健所連絡、HER-SYS入力等、通常の診療では必要のない業務が増え、各医療機関は、多忙を極めている。
検査キットの在庫「ゼロ」が1割
 COVID-19疑い患者を診療している医療機関では、PCR検査は77.0%が、抗原定性検査は76.8%が行っていることが明らかになった。抗原定性検査キットの在庫状況については、「10~19回分」との回答が28.2%で最頻であった(図2)。「全くない」と回答した医療機関も10.9%あった。
 検査キットがなければ、早期の診断は困難で、治療開始までの期間が長くなり、予後に悪影響を及ぼす危険性が高い。検査キットの確保は喫緊の課題と言える。
 歯科においては、抗原定性検査キットが確保できていない医療機関が60.4%に上った(図3)。歯科において抗原定性検査キットは、来院者の診断用ではなく、従業員の感染診断あるいは出勤前診断用と思われるが、不足から診療体制縮小につながっていると思われる。
 平日のPCR検査の結果判明までの期間は、「当日中」が23.2%、「翌日中」が41.1%、「2日以上」が34.4%となった。休日等を考慮するとさらに遅延が推測される。早期の治療(投薬)に結びつけるためには、検査結果判明までのさらなる時間短縮が必要である。
 検査を行わずにコロナ陽性と診断する「みなし陽性」を行ったことがある医療機関は33.2%であった。
 診断が下されていない状況は極力ゼロにすべきだが、検査なしで診断する「みなし陽性」は、医師の望むところではなく、検査キット不足等、他の社会的な原因によりやむなく行われていると考えられる。
内科の約半数が経過観察2割が往診を実施
 保健所から陽性者に対する連絡は、陽性判明後どれくらいかかっているか聞いたところ、「当日中」15.1%、「翌日中」17.3%、2日以上が42.2%となった。
 リスクが低いとされる陽性者への保健所からの連絡は、ないか後回しとなっているのが現状である。患者の状態変化等に対応するためには、より早期の介入が必要であり、現状の体制は不十分である。
 保健所や病床の逼迫状況を軽減するため、医療機関はさまざまな協力、努力を行っている。内科標榜機関では46.6%が、経過観察や治療を行っている(図4)。
 具体的に行っていることとしては、「毎朝の電話での連絡(病状把握)」「電話で症状確認し薬を配達」「電話再診、必要あれば往診」「オンライン診療」「在宅酸素療法導入」「重症リスクのある人やラゲブリオ投与後の健康観察」「個室隔離で血液透析」など、電話での陽性患者の病状の確認や投薬が多い。
 往診等については、内科標榜医療機関のうち4.9%が「施設への往診」、11.1%が「自宅への往診」、2.3%が「どちらも」実施していると回答し、合計18.3%の医療機関が行っている。
 今後は自宅療養、早期の療養解除の増加により、自宅等での診療がより重要となるが、これまでの在宅医療の中心であった慢性期の治療とは異なり、2類相当感染症の初期・急性期治療を在宅で行うのには困難が大きい。
 センターへの登録が必要な経口抗ウイルス薬モルヌピラビル(商品名ラゲブリオカプセル)の処方については、発熱等診療・検査医療機関のうち、58.7%がすでに登録し、32.2%が処方していることが分かった。
4割の診療所で職員が休業
 第6波が起こった今年に入って、COVID-19に関連して、休業した院長や従業員がいるか聞いたところ、医科において、休業した従業員が「いる」医療機関の割合は42.6%、歯科では41.0%となった(図5)。休業で診療への影響が「あった」と回答した医療機関は医科で60.7%、歯科で76.3%に上り(図6)、いずれも影響は甚大で、特に歯科において影響はより大きい。
 休業の理由は、医科では「検査陽性」が21.0%、「その他(濃厚接触者や子どもの休校など)」が61.9%、歯科では、それぞれ25.4%、71.2%であった。いずれも「その他」が多く、学校の休校や子どもや家族の感染による影響が大きいと考えられる。
 具体的な診療への影響としては、「外来業務が回せない」「電話対応、外来診療の人手が足りず、患者さんの待ち時間が増えた」「併設の通所リハビリ施設を3日間閉鎖」「新規患者をストップ」「以前勤めていたスタッフに連絡し、急遽勤務してもらった」など切実な声が寄せられている。
 困っていることでは、医科では、検査キットの不足や陽性者の経過観察への評価、通常診療・発熱外来・ワクチン接種と多忙であることなどが(表)、歯科では、検査キット不足で濃厚接触者の検査ができないことによる人手不足、患者の受診抑制などを訴える声が多かった。
 第6波の感染者増により、発熱等診療・検査医療機関を中心に地域医療提供体制に大きな影響が認められている。医療機関の多くが通常診療に加え、疑い患者の診療や経過観察、さらにワクチン接種等で、多忙を極めている。
 この状況に対しては、病床の確保や保健所の体制拡充は当然として、COVID-19疑い患者を診察する地域の医療機関への十分な補償が求められる。

アンケート概要 1999_04.gif

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表 新型コロナウイルス感染症急拡大で困っていること(医科) 1999_06.gif

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