兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年3月25日(2001号) ピックアップニュース

主張 ロシアはウクライナ侵攻と核兵器による威嚇をやめよ

 2月24日、ロシアが隣国ウクライナへの侵略を開始した。ロシアは圧倒的な軍事力を投入したが、ウクライナ軍の抵抗を受け戦況は予想以上に長期化している。これを受けてロシア軍は戦況打開のため、病院など民間施設への砲撃を行っているが、人道上許されるものではない。
 同じルーツを持つ民族でありながら、ウクライナはロシアに翻弄されてきた歴史を持つ。旧ソ連から独立を宣言した1991年以降も、2014年のクリミア併合や親ロシア派による紛争など、常に武力による攻撃にさらされてきた。2度にわたるミンスク合意を経てもなお、ロシアの介入は続き、2019年に圧倒的な得票率で大統領に就任したゼレンスキーとその政権に対してもロシアの強権発動は止むことはなかった。
 プーチン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大に対抗する緩衝地域としてウクライナの非武装中立化を求めている。またウクライナの核保有疑惑やロシア人虐殺などフェイクニュースを織り交ぜ、集団的自衛権の行使であるとして、侵略の正当性を主張した。さらには、国際社会の批判に対し、核の使用までもにおわせている。一方、ロシア国内では抗議デモなど反戦運動が日ごとに拡大しており、ロシアはこれを徹底的に弾圧し報道通信規制を強めている。
 ロシアの侵攻は、集団的自衛権の行使を口実としているが、ウクライナの主権を侵害するもので、武力の行使を禁止している国際法や国連憲章に違反しており、到底容認できない。また、核兵器による威嚇も、地域の平和と国際秩序を脅かすものであり、唯一の戦争被爆国の日本として決して許容できるものではない。
 にもかかわらず、安倍元首相が米との「核共有」議論が必要との見解を持ち出し、産経新聞も日本の非核三原則に対して否定的な意見を掲載した。テレビやネットでもこの機に乗じて軍備増強や憲法9条の廃止を求める声があがり、攻撃すれば報復されると相手に思わせることが必要だとの抑止力肯定論が跋扈している。しかし、核抑止力論をもとに近隣国同士で核戦力を拡大させると、周辺との緊張を高めるばかりか、誤射などの事故を引き起こすリスクが高まり、将来的には長期にわたり多国間で核軍縮に取り組まなければならなくなる。
 私たちは、ウクライナやロシア、日本での不誠実な主張に異を唱え、(1)戦争に明確に反対し、ロシア軍のウクライナからの即時撤退を求める、(2)ウクライナからの難民を積極的に受け入れるよう政府に求める、(3)侵略戦争に反対し不当に弾圧を受けているロシア人を支持する、(4)核武装の議論ではなく核兵器禁止条約への批准を求めることなどが求められる。
 3月18日時点でも停戦に向けた交渉が行われている。一日も早く停戦が実現し、これ以上の犠牲者が出ないことを願う。
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