兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年5月25日(2006号) ピックアップニュース

主張 沖縄本土復帰50年
沖縄に思いを馳せ平和憲法が輝く日本を

 5月15日、沖縄県が日本本土に復帰して50年を迎えた。1952年にサンフランシスコ講和条約、日米安全保障条約が発効し、日本が形式的にも主権を回復した一方で、沖縄は切り離されアメリカの施政下とされていた。日米安全保障条約に基づき、本土では米軍の基地が縮小される一方、沖縄では多くの米軍基地が提供・拡大され続けられてきた。これらの基地は、地元の住民を収容所に強制隔離し、その地に作られたものである。
 太平洋戦争終末期には、沖縄は本土決戦の準備への時間稼ぎとして〝捨て石〟とされ、住民を巻き込んだ地上戦の末、住民の4人に1人にあたる29万人以上が犠牲となったとされる。旧日本軍の組織的戦闘が終結した6月23日は現在でも「慰霊の日」として、沖縄全戦没者追悼式が行われている。
 日本が起こしたアジア・太平洋戦争の負の遺産の多くを沖縄に背負わせ続けていることは事実である。本土復帰から50年が経過してなお、米軍基地問題に象徴されるように、県民がこれまでに幾度となく示してきた「基地はいらない」の声は無視され続けてきた。われわれが単に沖縄だけの問題として他人事としてはいないか、自省が必要である。日米安全保障条約、米軍基地、地位協定、これらのことは決して沖縄だけの問題ではなく、私たち全国民の問題であることを忘れてはならない。
 この間のコロナ禍では、米軍基地からの感染拡大が起こった。その原因追及、防疫機能の強化に踏み切らなかった日本政府の姿勢は問題である。かつて返還前の64~65年には、沖縄で風疹ウイルスが猛威を振るい聴覚障害のある〝風疹児〟が400人超も生まれた歴史もある。これも米軍基地から広がったものとされている。
 ウクライナ情勢に乗じて〝核共有〟〝敵基地攻撃能力〟などを威勢よく声高に叫んでいる勢力がある。改憲派国会議員が3分の2を占める現在、これらの軍拡が強行される恐れは高まっている。この7月には参議院選挙、そして秋には沖縄知事選挙がある。核兵器のない平和な世界をつくり上げることは、日本が起こしたあの悲惨なアジア・太平洋戦争の教訓から生まれた、平和憲法である「日本国憲法」を持つ私たちの使命であり義務でもある。
 沖縄に学び、決して〝あきらめない〟粘り強い運動で世論を広げていくことが求められる。
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