兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年7月25日(2012号) ピックアップニュース

主張 核兵器禁止条約締約国会議を終えて
日本政府は速やかに条約へ参加せよ

 昨年1月に発効し、核兵器の開発や実験、製造、使用、威嚇などを禁止した核兵器禁止条約の第1回となる締約国会議が、ロシアによる軍事侵攻によって核兵器使用への懸念が高まる中、オーストリアの首都ウィーンで6月21日から3日間の日程で開催された。初めての締約国会議には、条約を批准した国に加えて、ドイツやノルウェーなど、条約に参加していない複数のNATOの加盟国がオブザーバーとして出席し、80カ国以上が議論を行った。会議では、「核なき世界」の実現を目指す「ウィーン宣言」と、具体的な取り組みをまとめた「ウィーン行動計画」を採択して成功した。
 「ウィーン宣言」は、ロシアの名指しは避けながらも「核兵器を使用するという威嚇に憂慮し落胆している。いかなる核による威嚇も明確に非難する」として、核の使用や威嚇を行わないよう、強く求めている。「ウィーン行動計画」は50の項目からなり、条約の締約国を増やすために取り組むことや、被爆者や核実験の被害者への支援や救済を進めることなどが盛り込まれた。
 核不拡散と核保有国に核軍縮を課す核拡散防止条約(NPT)との関係については、「禁止条約とNPTは補完し合う関係だ」と位置付けられた。NPTは、5大国以外の核保有を禁じている代わりに、核保有国には核軍縮の責務を課している。しかし、核保有国は核軍縮に後ろ向きであり、とても核兵器廃絶という人類共通の目標には到達しそうにない。今年8月には、7年ぶりにNPT再検討会議も開かれる予定だが、ウクライナ情勢を受けて核保有国同士の対立が続く中、行き詰まった核軍縮の方向性を示すことは難しいだろう。
 当面は、NPTによってこれ以上の核拡散を防ぐとともに、禁止条約の締約国を増やすことで、世界的に核兵器が非合法化されたという世論を広げ、核保有国を包囲するという両面での戦略が重要になる。
 しかし、禁止条約への我が国の対応はお粗末なものである。広島の松井市長や長崎の田上市長、被爆者団体らは参加したが、日本政府代表の参加は見送られた。ドイツなど、米国の核の傘の下にあるNATO加盟国ですらオブザーバーとして参加している中で、唯一の戦争被爆国である日本政府がオブザーバー参加をも見送ったのは、世界情勢でのプレゼンスを示す絶好の機会を逸したと言える。政府は核兵器廃絶という目標を実現するために、政府が言う核保有国と非核保有国の橋渡しではなく、条約に参加し、正面から核廃絶を世界に訴えかけるべきである。
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