兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年10月15日(2019号) ピックアップニュース

〝落語&トークの夕べ〟に80人
仏教・医療から自死防止考える
落語家住 職露つゆ団姫まるこさん×高宜良こうういりゃん医師がトーク

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露の団姫さん(左)と高宜良さん(右)が自殺対策をテーマに対談した

 医療と仏教という観点から自殺を防ぎ、〝生きづらさ〟の支え方を考えよう-。地域医療部・文化部・尼崎支部は共催で10月1日、協会会議室で「落語&トークの夕べ~仏教・医療から考える〝生きづらさ〟の支えかた」を開催。露の団姫さん(落語家、尼崎市・天台宗「道心寺」住職)、高宜良さん(精神科医・京都市・こう心療クリニック院長)が出演。会員、スタッフ、市民ら80人(来場52人、Zoom視聴28人)が参加した。

 一席目で団姫さんは、高校卒業後に師匠に弟子入りし、厳しい落語の修行をした際のエピソードや、怪談風の小咄、上方落語「地獄八景亡者戯」の一部を披露。「尼の尼さんである私は、落語家としては名人になりたい。僧侶としては自死を減らしたい」とし、会場は和やかな雰囲気に包まれた。
 高先生は「コロナ禍の自殺対策とネットワークづくりを考える」と題し講演。全国や兵庫県内の自殺の傾向を紹介し、「自殺は無職や、経済的な原因によることが多く、社会的対応が必要」と強調。精神的に追い詰められた人が、自殺以外の自己救済法が見いだせなくなる状況を「心理的狭窄」とし、「『他に選択肢がなく、死ぬしかない』と思い込んでいる状態から『他にも選択肢があり、生きる意味があるかも』と切り替えられる支援が求められる」「孤立や不眠などの危険因子に注意を注ぎ、生活の立て直しや周囲とのつながりなどの保護因子の強化が重要。そのためにも気持ちに寄り添うだけでなく、専門家への相談や生活援助につなげるネットワークづくりこそが課題」と呼びかけた。
 団姫さんの二席目では、高校在学中に裁判を闘うまでのトラブルに見舞われ、落ち込みの激しい時期には自殺企図をも抱いたと自身の経験を紹介。その際に人生の指針となる法華経に出会い「お釈迦さまも悩みぬいた人間であった」と感じることで気持ちや体調が軽快したことに触れ「信仰を持つことも自死に至らない一つの方策かもしれない。抜苦与楽・心の棘を抜くことが住職としてのモットー」とし、正式な天台僧となり、浄財を集めてコロナ禍を乗り越えながら尼崎市内に2021年天台宗「道心寺」を開いた経緯を述べた。
 対談では、団姫さんより「理不尽な仕打ちには正しく怒ることも重要。相談者の中には、怒りを抑圧しすぎている人もあり、我慢の結果、うつ状態になる可能性も否定できない」、高先生より「精神医療にも仏教(禅)の教えが取り入れられており、自身の状態に気づき、まずはありのままに受け入れることで共通している」などと、仏教・医療両分野からの融合的なアプローチが有効であることが示された。
 会場からは「重たいテーマを、面白く温かい雰囲気の中で聞けて良かった」といった感想が出された。

(次号感想文を掲載予定)

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