兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年11月15日(2022号) ピックアップニュース

燭心

 アントニオ猪木氏が10月1日、亡くなった。自分の中の大切な心の支えを失ったような気がして、とても悲しい▼幼いころの記憶を思い出した。「今まで隠していたけれど、パパの正体は、実はアントニオ猪木なんだ。これからスタン・ハンセンと勝負してくるから、応援してくれよ」。そう言い残して、親父は愛車のRX7(群馬ナンバー)でさっそうと出かけて行った▼果たせるかな、その夜、父親は本当にアントニオ猪木になって、リングに登場した。しかし、試合開始後まもなく、スタン・ハンセンの強烈なラリアートが直撃して、猪木はリングの外へ突き飛ばされ、そのまま失神してしまった▼幼い自分は親父が本当に死んでしまうのではないかと思って、号泣していたところ、リングで倒れているはずの親父がパチンコの景品を抱えて、帰宅してきた。親父が、死に際に別れを告げに来たのかと思い込んだ私は、「お願い、行かないで」と泣きじゃくりながら、親父に抱きついた▼たぶん、親父は自分の言った冗談のことなど忘れていたと思う。しかし、その日以来、親父はパチンコに通うのをやめて、休日にはキャッチボールをしてくれるようになった。だから、猪木の存在は自分にとって永遠に特別な存在であったのだ▼その後まもなく、「パパの正体は、実はカープの北別府学なんだ。これから巨人と勝負してくるから、応援してくれよ」と言って、麻雀に出かけるようになり、いろいろあったが、それはまた別の話である。(眞)
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