兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2022年12月05日(2024号) ピックアップニュース

参加記 保団連公害視察会
福島を忘れてはならない 副理事長 森岡 芳雄

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事故前のふるさとの写真を示す石井氏

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帰還困難地域とされている津島地域で解体される建物

 保団連は10月29日~30日にかけて、東京電力福島第一原発事故被災地への公害視察会を実施し、兵庫協会から森岡芳雄副理事長が参加した。福島第一原発周辺を視察するとともに、周辺住民らから話を聞いた。森岡副理事長の参加記を掲載する。

 事故後11年を経た福島を訪れた。
 29日には、いわて生活協同組合の山崎宏美氏、みやぎ生協・コープふくしまの宍戸義広氏、福島原発事故津島被害者原告団副団長の石井ひろみ氏、同団長の今野秀則氏の4氏からそれぞれ「生産者との関わりから汚染処理水の海洋投棄に反対する署名活動の取り組み」、「汚染処理水の海洋投棄の問題」、「原発事故後の様子」、「原発事故訴訟の現状と今後」について講演を受けた。
 山崎氏と宍戸氏からは、地元の生産物、生産者とのつながりにこだわって営業してきたコープが、事故後、主に漁師さんの声に耳を傾ける中で、汚染処理水の海洋投棄反対署名運動(下記)に積極的に取り組んでいく姿勢や、汚染処理水の海洋投棄問題について学習を深める中で海洋投棄ありきの政府、東電の姿勢に問題意識を高めていった活動を教えていただいた。
 石井氏と今野氏からは、日々の生活や郷土、伝統儀式・文化、コミュニティーを奪われ、いまだに原子力緊急事態宣言下で年間20ミリシーベルトの線量を強要される住民の生の声、避難指定地域で埋もれていくかつての郷土の映像を記録し公開していく活動、訴訟において国、東電の法的責任を求め、避難、被曝不安、ふるさと喪失に関する慰謝料を損害賠償の対象として勝ち取るなどの成果と国、東電の不誠実さ、ふるさと復興にかける思いと無念さを聞いた。「ふるさと」と呼べるような感情がほとんどない私の中で、地域に根付く郷土の価値、住民のつながりの重さを改めて深められる思いであった。
 30日には、バスで福島駅から川俣町、浪江町津島地域、双葉町、大熊町、富岡町、楢葉町、郡山駅と巡った。
 車内から測定した空間放射線量は、福島市内では0.1μSv/h程度であったが、川俣町、浪江町などを巡る山間部では1~3μSv/hまでの上昇が認められた。
 津波が押し寄せた地域では堤防や高台に造成された宅地が目立ち、帰還は少なく、荒涼とした感はぬぐえなかった。
 内陸部では一見何事もなかったように見えたが、帰還困難区域で人気はなく、時が止まったように見える中に所々に一部損壊しかかった家屋が見られ、地元ガイドの解説で、木々に覆われ、隠されつつある家屋が廃墟となり、イノシシなどの野生動物に荒らされている現状が伝えられた。
 足早で残念ではあったが、失われたものの大きさを感じる道中であった。
 福島を忘れてはならない。福島の現地をこの目で見ておかなければいけない。これまでもそう思い、これからもそうしていきたいと感じさせられた視察会であった。
 多くの方々に福島を訪れ、今を見ていただきたいと思うし、脱原発と核廃絶を願っていただきたいと思う。津島地域の伝統文化や今を伝えるDVD(下記)を住民たちが作成している。これを購入して、被災者の方々の思いと日本人にとっての福島を今一度考えていただければと思う。
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「アルプス(ALPS)処理水海洋放出に反対する署名」にご賛同ください
 コープが中心となって取り組む、政府が地元漁業者との約束を反故にして推し進める福島第一原発事故に伴うアルプス(ALPS:多核種除去装置)処理水の海洋放出の見直しを求める署名です。現在22万筆以上が集まっており、引き続きご協力をおねがいします。



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「ふるさと津島を映像で残す会」DVDのご案内
 福島第一原発事故により、10年以上経っても「帰還困難地域」とされている浪江町津島。消えゆくふるさとを記録するため、住民のインタビューやドローンで空撮した映像を収録したDVDです。
・「ふるさと津島」¥1000(本編70分)
・「津島の記憶」¥3000(3枚組250分)
 DVDのご注文は、インターネットで「ふるさと 津島」で検索、または下記事務局まで。
 署名用紙のご注文やお問い合わせは、電話078-393-1807 協会事務局まで

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